なぜニットにはトナカイや鹿が描かれるのか?【民族柄の基礎知識(2)】
冬になると欲しくなる民族柄のアイテム。でも柄の違いやその意味って、意外に知らないよね?
Q. フェアアイル柄の模様にはどんな意味がある?
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写真を拡大 規則的につながる記号のようにも見えるが、さりげなく雪の結晶も織り込まれていて、北欧の自然との密接なつながりを感じさせる。
フェア島(アイル)の住民たちの「家紋」がルーツ
フェアアイルセーターは手編みのため、同じ島の中でも一族や家族によってその編み方や模様の種類は微妙に異なっており、かつては「家紋」のような役割を果たしたという説がある。19世紀中頃に産業として発展して以降は、柄のひとつひとつに深い意味は込められていないようだが、その基本デザインは受け継がれているのだ。
よく見ると「雪の結晶」や「木」も散りばめられている
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雪の結晶をデフォルメした「スノーフレーク」。
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こちらもメジャーな「ツリーオブライフ」。
雪の結晶は、フェアアイルでは連続した模様の一部として、一方ノルディックでは大きくアイコンとして入ることが多い。また、木のように見えるのは「ツリーオブライフ」、別名「生命の木」と呼ばれ、大木に一族の繁栄や長生きへの願いが込められている。への字を重ねたような線画で描かれているのも、基本的な意味としては同じものを指す。
セーターの2大定番といえば「トナカイ」と「鹿」
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日本人にはクリスマスのイメージが強いトナカイ。
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よく使われる鹿は正確には「ヘラジカ」が描かれている。
まずトナカイは、ノルディック柄の産地であるスカンジナビア地方では古くから家畜として飼われており、現地の人の生活にはなくてはならない存在だったため描かれるように。一方、野生のヘラジカは狩りの対象でもあり、身近な存在だったことも採用された一因だろう。両者は角(ツノ)のかたちで区別できるが、実際には混同されることも多い。