「竹内結子、三浦春馬、木村花、自殺の他虐的要素と病死としてのとらえ方」2020(令和2)年その2【連載:死の百年史1921-2020】第6回(宝泉薫)
連載:死の百年史1921-2020 (作家・宝泉薫)
さて、自殺の他虐的要素といえば、なかなか考えさせられたのが三浦春馬の死だ。7月に首を吊り、30歳で旅立った。
警察の検視により、事件性のない「自死」と発表されたが、ネットの一部では「CIAの仕業」といった陰謀論が流れたり、再捜査を求める署名運動が起きたりした。そこには、遺書らしき遺書がなく、死に至った具体的な背景もほとんど見えないという事情が作用している。それゆえ、突然の別れを受け止めきれず、何が、あるいは誰が彼を追いつめたかを探ろうとすることで心のバランスをとりたい人が続出したのだ。
そんな人気俳優の死に深いショックを受けた人が、身近にいる。彼のファンだった妻だ。筆者も彼のことは好きだったが、家族にそういう人がいると他の家族はそうそう落ち込んでもいられない。おかげである意味、平静でいることができた。
しかし、その2ヶ月後、立場が逆転する。今度は自分がファンだった女優・竹内結子(享年40)が首吊り自殺。こちらも、死を選んだ経緯についてははっきりとしていない。
ただ、夫婦でふたりのことを偲べたのはせめてものことだった。配偶者という隣人の存在をありがたく感じたものだ。
そして、三浦と竹内にも隣人的接点があった。ふたりは一昨年公開の映画「コンフィデンスマンJP-ロマンス編-」で共演。ともに詐欺師で、愛し合うフリをしながら騙しあうという華も裏もある関係だった。パンフレットでは、三浦が「楽しかった」と振り返りつつ、こんな秘話を明かしている。
「音声は入っていないんですが、実は竹内さんと即興でおふざけの芝居もしていたので、そういった部分でも印象深いです」
そんなふたりは、おたがいの共通点には気づいていただろうか。それは、屈折した生育環境だ。
三浦の場合は、小学校時代に親が離婚。母が再婚して継父との三人暮らしとなり、十代後半で売れてからは彼が家計を支え始めた。そんななか、マルチっぽいビジネスに手を出していた母と関係が疎遠になり、ハタチくらいで引退も考えるように。周囲には、地元に帰って「町工場でも何でもいいから人目につかない所で普通に生きたい」(デイリー新潮)とも話していたという。
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