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がん治療で「頑張る」ことの限界

1万人以上のがん患者を治療する放射線治療専門医が語るがん治療最前線

 どの治療法を選んでも副作用、合併症が起きる可能性はありますし、一時はつらい治療もあります。それを覚悟して治療を受けている点での頑張りを評価したいです。しかし、それ以外に患者さんが頑張れることはさほど多くありません。治療で頑張らなければいけないのは医師のほうです。

 がんの患者さんから、「私は今後、どう過ごしたらいいですか?」「何か気をつけることはありますか?」と聞かれることがよくあります。そのとき、私は決まってこう答えています。

「普通に規則正しい生活をして、バランスのいい食事を心がけてください。それから、高いサプリメントや民間療法に手を染めないでくださいね。そんなお金があったら、自分の好きな美味しいものを食べてください。そのほうが精神的にいいですから」

 患者さんは決まって、ちょっとがっかりした顔を見せながら診察室を出て行きます。

 がんの予後に、免疫力が少なからず影響していることは、多くの人が知っています。その免疫力を高く保とうとしたら、むしろ頑張りすぎないで気楽に構えていたほうがいいのかもしれません。

 同じようながんに侵されたのに、転移・再発してしまう人と、完治にいたる人がいます。その二者の間にどんな違いがあるかと言ったら、現代医学ではわかっていません。もしわかっていたならば、とっくに論文が発表されているでしょうし、臨床で実践されているでしょう。

 だから、そんな答えのないことを考えていないで、一日一日を楽しんでください。それが答えなのかもしれないですね。

『最新科学が進化させた世界一やさしいがん治療』より構成>

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武田 篤也

たけだ あつや

放射線治療専門医。1994年、慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、防衛医科大学校病院、都立広尾病院にて放射線治療診療を行う。2005年に大船中央病院に赴任し、放射線治療センターを開設。以降13年あまりの間に、全国有数の高精度放射線治療施設とする。SBRT(体幹部定位放射線治療)を2000例以上行う(肝臓がんは世界1位、肺がんは国内2位)。70編以上の医学英文論文に加えて専門書『The SBRT book』(篠原出版新社刊)を執筆。中東の某石油産出国の国王に呼ばれ、診療を行った経験もある。


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  • 2018.01.19