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古賀茂明氏「成長戦略という言葉はまやかし」

古賀茂明×望月衣塑子が「独裁者」を斬る!⑤

日本の政治の裏の裏まで知る、元経産省官僚•古賀茂明氏は「成長戦略という言葉はまったくのまやかしで、日本の産業が本当に復活するような画は何もありません」と、安倍政権の中身の無さを見透かす。古賀氏と菅官房長官に鋭く斬り込んだ話題の記者・望月衣塑子氏との対談をまとめた新刊『国難を呼ぶ男! 安倍晋三 THE 独裁者』より一部をお届けする。

ーー安倍政権のもと、2018年以降、日本の政治はどのように進むのでしょうか。

■2017年10月の総選挙で決まった二つの路線

撮影/佐々木芳郎

 

古賀茂明(以下、古賀)この選挙で与党が圧勝したことで非常に重要な二つのことが決まりました。 

 まず、最も大事なのは、北朝鮮危機に対して、安倍総理が主張した「対話否定、圧力一辺倒路線」「米国追随一辺倒路線」が承認されたということです。
「日本がアメリカと一緒に北朝鮮と本当に戦争をする可能性を国民が認めた」と、安倍総理が主張する根拠を与えてしまったのです。野党は、憲法九条改正反対や安保法制廃止などを争点にしましたが、それによって、そんなことよりはるかに重要な「戦争するかしないか」という差し迫った争点が見えなくなっていたのです。

 これから3年か4年は衆議院選挙をしなくても済みます。2019年夏に参議院選挙はありますが、少なくともそれまでは、この二つの路線を続けることができるのです。日本の将来を変える決定的な出来事だったと言っても良いかもしれません。

■バラ撒き、バラ撒きで支持率アップに邁進

望月衣塑子 アベノミクスは、この先どうなっていくと思われますか。

古賀 アベノミクスは、①円バラ撒きによる円安誘導で大企業に儲けさせる、②財源がなくても国債大量発行で公共事業はじめ全国へのバラ撒きを行い国民の歓心を買う、そして、③既得権益に縛られて実際は何も改革できないが、表向きには「改革、改革」と叫んで何かが変わっているという雰囲気を演出するという三本の矢で成り立っています。今後は、これを徹底して実施し、ひたすら内閣支持率の維持・上昇を狙い続けるでしょう。これこそアベノミクスの〝真骨頂〞です。しかし、その裏側を見ると、成長戦略という言葉はまったくのまやかしで、日本の産業が本当に復活するような画は何もありません。
 
 先の衆議院選挙で本当に象徴的だったのは、Jーファイルという四百数十項目もある自民党の公約に、電気自動車(EV)のことがひと言も書かれていなかったことです。水素自動車のことは書いてありますけど。いまや、マスコミでも「EV革命」という言葉を見ない日はないくらい世界情勢は変わっているのにもかかわらず、ですよ。2016年の参議院選挙の公約をそのままコピーしただけのものでした。 

 憲法改正のためには、まず経済で国民を満足させて支持率を維持したい。そのために、最も手っ取り早いのがバラ撒きだという確信犯で、その先日本の経済をどうするのかということは何も考えていない。このままでは、これまで同様、世界での日本の地位がますます下がっていきますよ、ということです。その先には経済破綻か、あるいは運よく破綻ということにならなくても、世界の中で確実に貧しい国に落ちて行くでしょう。仮に北朝鮮との間に戦争が起きなくても、全く別の形で、日本の国民は大変な災いに遭遇することになるのです。これが日本にとっての最大の危機だと私は思っています。

『国難を呼ぶ男! 安倍晋三 THE 独裁者』より構成)

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古賀 茂明(こが しげあき)

1980年東京大学法学部を卒業、通商産業省(現・経済産業省)に入省し、大臣官房会計課法令審査委員、経済産業政策局課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任。2008年国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任し、急進的な改革を次々と提議。2011年3月の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を受け、日本で初めて東京電力の破綻処理策を提起。その後、経産省から退職を勧告され辞職。著書に『日本中枢の狂謀』(講談社)『国家の共謀』(角川新書)他多数。



望月 衣塑子(もちづき いそこ)

慶應義塾大学法学部卒業、東京新聞に入社。2004年日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑をスクープし、自民党と医療業界の利権構造の闇を暴く。2009年足利事件の再審開始決定をスクープ。東京地裁・高裁担当、経済部記者などを経て、現在は社会部遊軍記者。防衛省の武器輸出政策、軍学共同などを取材。森友・ 加計疑惑で菅官房長官に斬り込み、これを契機に追及が加速し話題を集める。二児の母。趣味は子どもと遊ぶこと。著書に『武器輸出と日本企業』『新聞記者』(角川新書)など。


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