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金メダリスト・船木和喜に聞く。現役と経営が両立できる理由

Q4・競技者と経営者の両立は可能ですか?

もう今から20年前になる。1998年、長野オリンピックの名シーンと言えば、スキージャンプ団体ラージヒル。原田雅彦さんが「フナキィ~」と声を絞り出して祈る中、4人目の船木和喜さんがジャンプを成功させて金メダルを獲得した。船木さんは個人ラージヒルでも金、個人ノーマルヒルで銀メダルを獲得。ワールドカップ通算16勝は日本最多勝利数である。 船木さんは長野オリンピック後に独立しスポーツマネージメント会社を設立しその他、食品事業もはじめアップルパイを手掛ける実業家は、ジャンプの普及、支援活動にも熱心で、指導者の顔をも併せ持つ。そして42歳の今なお現役のジャンパーだ。船木さんの「金メダル後の人生」に迫る。第4回。

【前回まで】
五輪金メダリスト船木和喜が「新宿のビルで上から下まで飛び込んだ」理由
メダリストは何で恩返しをするのか。船木和喜の答え
現役ジャンパー・船木和喜が取り組んだ餃子、コロッケ、アップルパイ販売

■スマホから情報は得ないようにしている

――1999年に独立して5年間足固めをして、2005年のワールドカップ札幌大会でラージヒルにおいて優勝を遂げました。そして2008年に食品卸売会社「えにし」を立ち上げた翌夏、サマージャンプで2勝。2009年12月の名寄ピヤシリジャンプで6シーズンぶりの優勝を果たしています。事業が忙しくなる中で、競技の成績も向上しているのが非常に興味深いです。

 

船木 直感で先に動いてしまうのが自分なんですけど、ジャンプも、経営も同じやり方ですね。やらされて失敗するというのは納得できないタイプ。自分でやってみて、やりながら考えていく。競技では計画を立てて動いたうえで新しいトレーニングを取り入れたり、自分に枝づけしていく。経営も計画を立てて、動いてみて、ああしよう、こうしようと考えていく。もちろん途中でやめる計画もありますけど、自分の責任で動くところが楽しいなと思います。でも相乗効果っていうのは、どうですかね。そこまで考えたことはないです(笑)。

 

――いろんな人に会って話を聞いたり、交渉したり、お客さんとも会話したりなどと人と接する機会もより増えたと思うのですが。

船木 そうですね。何気ない会話の中にも、何かヒントになるような情報とか話題をキャッチしたっていうのはありますね。たとえば電車に乗っていても、人がどんな会話をしているのかって気になりますから(笑)。ただ、スマホから情報を得るというのはなるべくならやりたくない。ジャンプのことを考えると、やっぱり目は大切なので。

――独立1年目で契約したスポンサーは3社でした。あれから10年近く経った今はどうでしょうか?

船木 一時期は2社ぐらいになったこともありました。今は(スポンサー契約の)いろんな形はありますが、有難いことに17社、僕の夢を買ってもらっています。オリンピックで金メダルを獲った以上、銀メダルじゃ認められないことも分かっています。それでもオリンピックに出ること自体、空いちゃっていますけど、40歳超えて復活する夢を一緒に見てもらっています。

 今のスポンサーになっていただいている方は、みなさん、いろいろと相談できる方ばかりです。『成績は二の次でいい。頑張っている姿を見せてくれればいい』とも言ってくれます。その気持ちは有難いのですが、自分としては少しでもいい結果を出して、スポンサーさんの会社を何とか宣伝したいなという気持ちでやっています。

 そしてスポンサーになってない方でも、応援してもらっている人は多くいます。飛び込み営業した縁からそのまま続いている方もいます。何か相談ごとがあれば、聞いてもらっていますから。そうやって多くの人に支えられて、今の僕があるのかなと思っています。

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