最強のエンターテイメント「菅義偉政権」で総理の菅さんの影が薄い件で
【連載】山本一郎「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」
■「菅降ろし」の機運のなか、文春砲がロン毛スモーカーのご長男に…
漫画『進撃の巨人』が流行っていたころ、最初からいるエレンが主人公なのかなと思っていたら、途中からリヴァイ兵長に人気が出て、親が殺されて大変なことになっているはずのエレンが空気みたいになってたじゃないですか。
本当であれば総理大臣として陣頭指揮を執り、日本の宰相・指導者としておおいに切り盛りするはずの菅義偉さんがいまやたまにテレビにたまに映るスダレハゲ程度の扱いとなり、いまやパブリックエネミーとなった森喜朗さんや、なんか面白いことを言う河野太郎さんに主役の座を完全に奪われているんですよね。決してどうでもいい存在ではないはずの菅義偉さんの、その目立たないがゆえのどうでもよさは、F-35もビックリのステルス性能を持っているようにも思います。
ちょっと前までは、菅政権誕生に貢献したはずの自民党幹事長・二階俊博さんにすら梯子を外され、支持率は急低下、ガチで菅さんでは来たる衆議院選挙は戦えないということでさっそく「菅降ろし」の機運が盛り上がっていたはずです。ところが、俺たちの森喜朗による起死回生の女性蔑視発言と、それに連なる二階俊博さんの失言によって菅義偉さんは存在すら忘れ去られかねない危機が訪れたんです。
そして、どうにも影が薄いなあと思っていたら、まさかの文春砲が菅義偉さんの、ご長男・正剛さんのほうに当たりました。戦後の面白カンパニーとして名高い東北新社の接待役として、ロン毛のスモーカーという衝撃のビジュアルは、総理なのにステルス性能を発揮する父・義偉さんとは対極にある存在感であるとも言え、血脈における父子のビフォー・アフターに思い至るわけであります。
うっかり接待されると秋田産ササニシキを送りつけられかねない地雷臭と、高級官僚とはいえ一食7万円程度の接待でまがりなりにも国内数千億円市場である衛星放送事業が歪められたかもしれないとなると「疑惑追及などどうでもいいので、7千円の焼肉ぐらいおごるから私にその放送事業いっこください」と言いたくなります。もちろん、接待を受けたとされる局長以下官僚の皆さんも脇が甘いのは間違いなく、ただでさえなり手が不足し(天下りしない限り)薄給に喘ぐ国家公務員の就職先としての人気も再び地に堕ちるのではないかと思うと激務に耐える現役官僚の皆さんのお気持ちに寄り添わざるを得ません。
何と言っても、官邸が霞が関の人事を巻き取る内閣人事局が、役所に勤めるすべての皆さんの首根っこを押さえている以上、うっかり菅義偉さんの息子さんからのお誘いを断ったら何があるか分からんわけです。一方で、ついつい飲食をご一緒して接待を受けてしまえば今度は文春砲の十字砲火に晒され、名指しで収賄野郎だとか汚職官僚オッスオッスといった批判に晒されるわけで、進むも地獄、退くも地獄のもんじゅ状態に陥るのであります。やってられません。