超魔術「自毛植毛」を経験したMr.マリックの頭部に奇跡は起こるのか
植毛の進化論「薄毛は隠すから治す時代」へ 〜自分に合った治療法の見つけかた〜
■不安だった術前術中、そして術後についての本音
こうして自毛植毛を行うことになったマリック氏だが、術中の様子や心理はどうだったのだろうか。
「移植されていることは感覚的にはわかりましたが、不安だった痛みは特に感じなかったですね。それよりも、今回は1,000を超える株(※「株」とは毛根組織のこと。1株の毛髪は平均2.5本)を移植したのですが、かかった時間は3時間ほどだったのです。これは美容院に行くときよりも短いくらいでしたね」
また、術後は誰にも気づかれなかったことにも驚いたという。確かに、移植部位が生え際ではなく頭頂部というのもあるとは思うが、私たちも約1時間の取材を通して「手術後」ということを忘れてしまうほど、その術後経過は自然であった。
「まだ毛が生えてきたわけでもないし、もちろん個人差もあるでしょう。それでも、あれから2週間が経過して『やってよかった』と感じています。これから自分の髪がどうなっていくのか、楽しみでしかたないんです」
マリック氏にとっては、40年来の付き合いがある信頼できる知り合いからの紹介、そして業界トップドクターによる施術という安心感があった。また、コロナ禍でイベントも減っていたため、時間的な余裕があったのも大きかったようだ。これらすべてが重なったことで自毛植毛へと踏み切ることができた。逆に言えば、そうでなかったら不安が勝ってしまい、自毛植毛に至らなかったかもしれないと言う。
やはり、手術に対するハードルは高いのだろう。
「誰かの勧めくらいでは簡単に決断できないですよ。それに、普通の70歳なら諦めてしまうでしょう。だからこそ私が、自分が経験したことを話すということに意味があると思ったんです」
■70歳を過ぎても人生は好転する
私たちの社会は著しく変化し続けている。その中には目覚ましい医学の進歩もある。その結果、不治であった薄毛は自毛植毛によって「治る」時代となった。
しかし、日々夥しい量の情報が溢れる現代では、様々な情報を簡単に入手できるようになった反面、自身に必要な治療法へたどり着けない人も増えている。そういった意味では、今回マリック氏が自身の経験を真摯に話すことが、多くの薄毛難民の背中を押すきっかけになるかもしれない。
「体験した人が言わなければ伝わらない。でも、普通は言わない…というよりも、誰だって自毛植毛したとは言いたくないでしょう。これまでも、これからも、私の仕事は人を楽しませたり驚かせたり、ハッピーにすること。今回はマジックではないけど、自分がその役割を担えたらいいですね」
髪の悩みは何らかの心理的な痛みを伴っていることが多い。だからこそ、薄毛を治療することで髪とともに失った自信を取り戻し、気持ちを前向きに転換することも可能となる。
自身の悩みを解消することは、これからの人生が好転させ、より豊かな生活や人生へつながっていくはずだ。そして、人生100年時代を迎えた今、それは何歳であっても変わらない。
この日のマリック氏の表情や言葉、何よりも、氏が醸し出すポジティブな雰囲気こそがその証拠ではないだろうか。
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