コロナで暴かれた「誰も責任もリーダーシップも取りたがらない国、日本」
小説家・黒野伸一が見たコロナ禍日本の「真の姿」
拙著『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』を脱稿したのは、2020年10月のこと。日本経済を、バブル崩壊直後から振り返り「このままの状態が続けば、20年後にはこんな未来が待っているのではないか」ということを小説の形で提示したかった。そのため、小説とはいえ、歴年の政策や社会情勢の推移は、リアルに描く必要があった。
90年代後半から記述を始め、やっと現代にたどり着いたと思ったら、世の中コロナ一色になっていた。これには頭を抱えた。コロナが収束するのを見届けなければ、現実的な未来は描けない。かといって版元にもスケジュールがある。担当編集者と熟議した結果、コロナ禍がどうなっていようが、2020年秋には物語を終わらせようということで合意した。
そんなこんなで「えいや!」の想像で書いた、昨年冬から今年末までのコロナ禍の推移を今読み返すと「2020年冬から21年春にかけて、第3波の流行が日本を襲った。第1波や2波に比べ、変異したウイルスは強毒性で、感染力も強かった……」という記述がある。あながち的外れではなかったようだ。緊急事態宣言は解除されたとはいえ、感染は高止まりで、いずれ近いうちに変異種が主流の第4波が来る、と指摘する専門家も多い。
さらに読書を進めていくと「(中略)しかしながら国は依然として、有効な手立てを打てずにいた。相変わらず国民に手洗いや自粛を促し、スズメの涙ほどの給付金を与えるだけで、のらりくらりとやり過ごした」。これもしかり。具体的なコロナ対策が未だに見えてこない。そもそも第四波のリスクが指摘されているのに、なぜ今緊急事態を解除したのか疑問だ。政府は再拡大を防止するために、5つの柱からなる総合的な対策を講じるというが、国民がこれで安心するとは到底思えない。柱とされる、戦略的な検査の実施や、医療体制の強化、飲食を通じた感染防止などに関しては、正直「もう何百回も聞いたよー。まだやってねーのかよ。早くやれよっ!」というのが、本音である。
拙著の中で使用させていただいたMMT(現代貨幣理論)によれば、自国通貨を発行し、変動相場制を取っている国は、いくらでも積極財政ができる。だから賛否両論はあるだろうが、国民の収入は全額国が補償するから、ともかく表に出ないでくれという強硬策を取って、早い時期にウイルスの徹底封じ込めを図るべきだったと個人的には思う。