俺たちのガースー、丸腰訪米首脳会談の憂鬱【山本一郎】
【連載】山本一郎「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」
■日米関係が問題視する先はまさに中国問題
俺たちの総理大臣・菅義偉さんの訪米・バイデン大統領との首脳会談が4月9日になったとの報道がありました。
国内ではコロナ対策がまともに進まず、ワクチン接種のスケジュールも微妙に遅延している状況でなぜか緊急事態宣言は解かれ、さっぱり盛り上がらない東京オリンピックの聖火リレーが始まってしまいました。感染力が強いとされる変異種コロナウイルスがどのくらい我が国で流行してしまうのかは分かりませんが、ガースー官邸ができて早半年、またバイデンさんもすったもんだの末に大統領に就任されてから3か月弱というところで強固な日米関係の確認をするためにも訪米することそのものは何も問題ないとは思うんですよ。
その日米関係が問題視する先はまさに中国問題でありまして、先般3月16日にブリンケン国務長官とオースティン国防長官との日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が実施された際は、名指しで中国問題だぞっ、ということで歩調を合わせて対策を打とうという流れになりました。この中で、私たちが実効支配している固有の領土である尖閣諸島について、日米安保条約に基づくアメリカからの協力の取り付けを再確認するなど、アメリカの対中強硬姿勢に我が国が乗っかる形で外交・軍事ともに一致した立場で取り組むことになっています。
それはそれで良かったね。
ところが、世の中タダ飯というものは存在しません。光あれば闇あり、不倫あれば離婚あり、そういうアメリカの側に立ち、民主主義国陣営として我が国がどれだけ不退転の覚悟でこの問題に取り組むのか、ガースー政権には重い踏み絵が用意されております。
ひとつは、目下世界の注目の対象となった、事実上の「ジェノサイド」として批判批難のまととなっている中国の少数民族政策、すなわち新疆ウイグル自治区での民族浄化・同化問題です。これはアメリカ、カナダのみならずEU(欧州連合)も中国の子の政策を強く問題視し、中国に対する制裁を民主主義陣営が一丸となって行うべきだという風がとても強くなってきました。
もうひとつは、後述しますが世界的な気候変動問題で、日本はアメリカに対して環境規制やエネルギー政策についてかなりの譲歩を約束させられるのではないかという点です。
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