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【50代からの「家」のあり方】空き家からリノベーションへ「生きるための家」つなぐ価値への転換点《人生のつなぎ方③》

◼30年かけて建物の価値がゼロになる矛盾

 一国一城の主となる。結婚を機にマイホーム(戸建)を所有することは、夫婦の夢であること、その家計の夢が原動力となり国家の夢と重なり、高度経済成長を「個人消費」の面から支えたことも事実だろう。
 しかし、それは終身雇用制(無期限雇用)の会社員である信用がベースにあったこと。さらに、その信用が、例えば、35年住宅ローンを成立させ、住居(土地含む)の所有が可能となり、その完済と同時に、退職金と厚生年金で老後に備えることができる「ライフサイクル」が前提にあったからこそ可能となった「からくり」であった。
 土地価格(公価)も下がらない「神話」も当時の人びとの意識にあったのかもしれない。ゆえにマイホームの夢は、高度経済成長期の「歴史的」なものであって現在の視点から言えば、「奇跡」とも呼べる夢だったのかもしれない。

 しかし、30年以上の住宅を売却した経験のある人(相続物件含む)なら実感できるだろうが、「上物=建造物」はほぼ価値はゼロになり、土地のみの価格しか残らないのである(特に81年施行[新耐震基準」以前の上物)。
 例えば、4000万円で新築物件(土地2500万円、上物1500万円)を購入したときから30年後、売却した場合、土地価格が上がらなくなった状況では、2500万円以下に価値が減数する可能性が高い。現に、コロナ禍による土地需要の減退は国交省の公示地価でリーマンショック後の2009年以来の下落幅を記録した(本年、1月1日時点)。
 さらに、家の住宅寿命における国際比較では、著しく低い日本の住宅寿命を示している。

《住宅寿命の国際比較》
日本30年
米国55年
英国77年
(「住宅長寿命化に向けた研究の取り組み」2011年国土技術政策総合研究所 大竹亮より)

 果たして「一国一城の主の家」は、もちろん、家を持つことで、人生に張りができるメリットもあることは確かなのだが、資産運用の観点からは、ドアに鍵を挿して入居した瞬間に「家」の価値は目減りするという「残念な」ものとなることも事実である(1969年〜2011年まで、900兆円弱の住宅投資=国民の資産が334兆円。正味500万以上まで失われる)。
 これは、明らかに国民の資産形成を阻害していることにもならないだろうか

 また、容易に居住の移転の自由を阻害するため、家族の成長にともなう変化——例えば高齢化への方策、例えば、高齢化にともない自宅売却しての駅近の「サービス付き高齢者向け」物件(高サ住)や老人ホームに移りたくても建物価格がゼロになるため容易には移れない状況になる、

 さらに、そうしたマイホームの思想、愛情が、子供たちに「つながった」かといえば、概ね理解されてはいるものの、現状、空き家問題が社会課題となっていることからもおぼつかない状況であることは否めない。
 団塊ジュニア世代は、バブル崩壊後の「就職氷河期世代」でもあり、親の世代との経済的格差もある。さらに、核家族化と個人主義の傾向は親世代よりも「常態」化している。さらに「育った家には帰らない」という自立心も強い傾向がある。
と同時に、彼らも親同様、住まいの購入には新築物件を購入する傾向もある(また1968年以降、住宅は供給過剰であることも事実である)。

「私たちは人生のライフサポートを、SDGs(持続可能性)として位置付けています。不動産もそのように捉えるべきだと考えております。つまり、人と人をつなぐことは、人生観をつなぐことだとも思うのです。具体的には住み慣れた家の素晴らしさを、新しい世代に活かしながらつなぐことだとも思うのです。さらに、日本には住み替えの文化が成熟していません。中古住宅が資産として適切に管理されない傾向があります。それを私は変えていきたいと考えています」(前出・竹本氏)

 

◼「住み替え」人生のリノベーションの発想——レモンの原理を超えて

 ここで中古住宅市場の流通シェアを見てみよう。
 日本が、新築住宅文化であり、住まいが一生に一度の買い物として購入されていることがはっきりとわかるデータである。ゆえに、日本では、不動産は文字通り「一生もの」とされてしまう。

《既存住宅の流通シェア国際比較》
日本13.1%
米国77.6%
英国88.8%
仏国66.4%
(国交相「平成15(2003)年資料より」)

 しかし、人生は年とともに変化する。その需要の変化に応じた住宅を選択でき、最適化するための情報が極めて少ないのが、問題なのかもしれない。
 つまり、私たちは、資産を人生の中でどう運用すべきか、とくに人生を賭けて目減りする新築住宅に投資するも、老後でお金が入用のときに「ない」状態になっているのだ。
 人生100年時代とも言われるなかで、これは明らかに不利な買い物ではないのか。

 では、中古住宅市場——なぜ「住み替え文化」が、日本では根付かないのだろうか。

「今までは、たしかに住宅は新築(戸建)が中心であったことは確かです。それは、中古住宅に関する情報が少なかったことに関係しているのではないでしょうか。とくに売り手と買い手の間に建物の情報に関する格差があったと思うのです。私の考えるリノベーションは、まず買い手である顧客が納得できるまで話し合い、顧客の人生における希望と向き合い、寄り添った上で、中古住宅の可能性が生まれ、大きく変わると考えているのです」(前出・竹本氏)

 竹本氏の話は、学術的には「アカロフのレモン市場(1970年)」と言われる原理である。
 レモンの品質は、厚い皮に覆われて、外からは鮮度や品質がわからない、という喩えから購入後、はじめて品質や本当の価値がわかる商品が取り引きされる市場のことを言う。すなわち、買い手は売り手よりも情報が圧倒的に少ない「非対称」の関係にあること。これが、日本の中古住宅市場を活性化できていなかったかもしれない。

「ライフプランとしてお客様の人生を考えた場合、例えば、夫婦ともに若く結婚をなされて子どもを育てる場合は、郊外の大きい戸建などでのびのび暮らしたりでいいかもしれませんが、子どもが自立され、老夫婦になったときには、建物への管理の負担が少なく、駅に近い利便性のある物件などがよくなるケースもあります。そうしたライフサポートをお客様の人生の節目と向き合いながら誠実に考えていくべきだと思うのです。その意味で経済的負担を少なくしながら快適に暮らせる住み替えの文化を築いていく時期にきていると思うのです」(前出・竹本氏)

 では、具体的に「住み替え」は、どのように行われるべきなのだろうか。
 リノベーションが行われている現場を取材した。

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株式会社クオーレ

私たちクオーレは、「人」を一番大切にしています。
人を大切にするということは、お客様はもちろん、スタッフ、業者様、家族など全ての人に対し感謝の気持ちを持つことです。
常に感謝の気持ちを持ち、ライフサポートサービスを通じて、社会にも貢献していきたいと思っております。
ライフサポートサービスとは、お客様の「生活」、「人生」、「命」をサポートさせて頂く仕事であり、お客様との信頼関係を築けて初めて成り立つ仕事です。
毎日の仕事の中で、お客様の抱えている問題を一つひとつ解決し、日々真剣に取り組んだ結果が信頼に繋がると考えております。
人を大切にし、信頼を積み重ね、そしてお客様と一生のお付き合いをしていける、そんな企業であり続けたいと思っております。

株式会社クオーレ
代表取締役 竹本泰志

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遺品整理の現場を10年以上、数万件という現場を見てきた中で、顧客の課題、買取業界の課題解決を目指すべく、各分野の専門家を集めて「ウリエル」を立ち上げることになりました。

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