女性を「失業や貧困や自殺」から救うために上野千鶴子氏が知るべきこと【中野剛志】
財政赤字は、本当に将来世代へのツケなのか?
テレビ朝日のニュース番組「報道ステーション」が番組のウェブCMを公開するやいなや、SNS上で「女性をバカにしている」などと批判が殺到し炎上。番組は公式ツイッターで謝罪し、CMの公開を停止した。その最中にツイッターでつぶやいた社会学者の上野千鶴子氏の発言こそが大きな誤解と問題を孕んでいると指摘するのが評論家の中野剛志氏。中野氏の『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(ともにKKベストセラーズ)がMMT(現代貨幣理論)の最良の教科書として超人気のロングセラーだが、上野氏の「財政政策の考え方」と「ジェンダーに関する無意識」に対して敢えて警鐘を鳴らす。
■上野千鶴子氏のツイートの見過ごせない問題点とは
東京大学名誉教授で社会学者の上野千鶴子先生が、4月5日に、ツイッターで、次のようにつぶやきました。
これは、とても東京大学名誉教授の社会学者の発言とは思えないほど、間違いだらけです。
こんな報道ステーションのCMがあったら、炎上どころでは済まないでしょう。
どこから間違いを指摘すればいいのか困惑するほどですが、やってみましょう。
まず、今の政権が財政赤字を大きく拡大したのは、事実です。
しかし、それは、コロナ対策として必要だからでしょう。もし「こんなに借金作って」なかったら、我が国は、はるかに深刻な事態に陥っていたのは明らかです。
とりわけ、コロナ禍では、男性よりも女性の就業者数の方がはるかに大きく減少しました。また、2020年の対前年比の自殺者数も、男性は26人の減少でしたが、女性は934人も増えています。
コロナ禍は、女性に対してより深刻な打撃を与えているのです。したがって、コロナ対策のための財政支出は、女性のために、より必要なものです。政府もこの点を重視しており、コロナ禍に苦しむ女性を救うという目的に絞った予算も組んでいます。
ですから、今の政権が「こんなに借金作った」のは、女性を救うためにこそ必要だったということを確認しておきましょう。
さて、財政赤字と言えば、「現在世代による将来世代へのツケ回し」という説が流布しています。上野先生もそういう俗説に乗っかって、「ツケはぜぇ〜んぶ私たちにまわってくるのよ」と言っています。
この俗説の間違いは後で指摘するとして、それ以前に、「オジサンのツケを若者に払わせないでよ!」というのは、いくら何でも酷いですね。なんで、ここで「オジサン」だけが出てくるのでしょうか。世代間の負担の問題に、性別は関係ないでしょう。
これは、ジェンダー平等という観点から、はなはだ不適切な発言と言わざるを得ません。