エディーHC 選手時代の苦い経験。気付きを与えた1冊の本
自分を理解することこそ、プレッシャーを理解すること【「プレッシャー」の力③】
■『The Inner Game of Tennis』から学んだ、「1人目の自分」と「2人目の自分」という考え方
――心配すべきこととそうでないことをハッキリと切り分け、自身へのプレッシャーからくる緊張は、確立されたルーティンで対処する、ジョーンズ氏。こうした達観した見方をするようになった原点はあるのか?
私だって、若い頃はこうしたプレッシャーへの対応方法が分からずに、失敗したこともある。私がまだ選手だった24、5歳の頃、初めてシドニーの選抜チームの練習に呼ばれた。これは当時の自分にとっては大舞台だった。最初の練習では緊張のあまり手に汗をかいてしまい、まともにボールを投げることすらできなかった。
この後、私は『The Inner Game of Tennis』 (W.Timothy Gallway著)というスポーツ心理学の本を読んだ。本の内容は、「1人目の自分」と「2人目の自分」、という切り口で書かれたもの。1人目の自分とは、自分の中にいる自分で、自分の考えを司る。これが、外見上の2人目の自分をコントロールする。なぜなら、頭の中で考えていることは、常に行動に表れるだからだ。
――この本の内容が自分を理解する助けになり、プレッシャーを理解することに役立ったと?
私はスポーツの世界に長く生きており、試合でいい結果を出したい、勝ちたいという強い願いが、プレッシャーの源泉になっている。これがこの本でいう1人目の自分で、プレッシャーをポジティブに利用している時は、2人目の自分、即ち考えを行動に移す自分が、勝利の為に必要な行動をとる。
ところが、初めてシドニーの選抜チームの練習に参加した時は、このプレッシャーがネガティブに働いた。つまり1人目の自分が、失敗したくないというネガティブな考えにとらわれ、2人目の自分は手に汗をかき、緊張のあまり基本プレーすらままならない状態になったのだ。要するに、自分の中に、プレッシャーをネガティブに感じてしまう自分がいると気付かされた。
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