エディーHC 感銘を受けた原辰徳氏のスピーチ「悪魔を呼び出せ」
プレッシャーをいかに楽しむか【「プレッシャー」の力⑦】
■己の中にプレッシャーを楽しめる悪魔を呼び出せ
――プロの指導者として勝負の世界に長く身を置き、計り知れないほどのプレッシャーにさらされてきた。その中で自分なりに考察を重ね、勝負の現場でも実践してきたジョーンズ氏。プレッシャーに押しつぶされた経験も、それに打ち勝って立ち上がった経験も持つ。現在、「ラグビーの母国」イングランド代表HCとしての厳しいプレッシャーをどう受け止めているか。
代表チームの監督というのは非常にプレッシャーがかかるポジションだが、あまり長くできる仕事ではないと自覚している。しかしこの仕事ができる間は、この強烈なプレッシャーというものを楽しもうと思っている。プレッシャーを楽しむと言えば、私が日本代表を指揮していた2015年2月に、原辰徳氏(元・読売ジャイアンツ監督)を合宿所に呼び、スピーチして貰ったことを思い出す。その時の彼の言葉は、非常に印象に残るものだった。
――これは自分の指導する選手たちにも、試合前にはプレッシャーを楽しめる悪魔を呼び出して欲しい、ということか?
例えば野球の試合で言えば、プレッシャーを楽しんでいる選手は、緊迫した試合の守備の場面でも、「自分のところへ打球が来い」というメンタリティを持っている。ミスをしたらチームが負けるという場面で、敢えて自分がその勝負を受けたいと考える。逆にここでボールが「自分のところへ飛んで来るな」と考える選手は、プレッシャーに負けている状態。こうしたネガティブな考えは、ネガティブな動きを生み出し、かえってミスが起こりやすくなる。
指導者が自分のチームの選手たちに、どちらのマインドを持って戦って欲しいかは言うまでもないだろう。
――ここまでで、プレッシャーを理解する、耐性を鍛える、相手にかける、楽しむ。様々なアプローチがあることを教えてくれた。最後に、いまこれを読んでいる日本の読者に伝えたいことは?
プレッシャーとは、必ずしもネガティブなものではないということを理解して欲しい。誰だってプレッシャーに押し潰され、苦い経験をすることがある。しかし、そこからプレッシャーに打ち勝った成功体験を重ねて、「プレッシャーを利用する」ことができるようになれば、勝負強い人生を送ることができる。
それには、何を心配すべきで、何を心配すべきでないかをしっかりと見極め、適切な鍛錬を重ねる必要がある。難しいのは、それでもいつも勝てるとは限らないということ。しかし、人生には必ず次の勝負、次のプレッシャーというものがやってくる。何かが上手くいかなくても、なぜ上手くいかなかったかをよく考え、次の勝負で、取り返せばいい。