ローカル区間と都市近郊区間を併せ持つJR筑肥線の旅
JR筑肥線の旅
■景色が目まぐるしく変化する筑肥線
JR筑肥線は不思議な路線である。博多駅から西へ進む地下鉄空港線の終点姪浜駅が起点となり、唐津駅までの電化区間と、唐津駅から唐津線に乗り換えて南へ2駅目行ったところにある山本駅からさらに西へ向かい磁器で有名な伊万里まで延びるローカル色たっぷりの2つの区間から成り立っているのだ。今回は、伊万里から博多へ向けて旅をしてみた。
伊万里駅は道路をはさんで西側に第3セクター松浦鉄道の駅と東側のJR筑肥線の駅とが向かい合っている。道路はクルマの通行量が多いためか横断歩道がなく、エレベータか階段で2階へ上がり、デッキを通って移動することになる。小雨が降っていて、屋根付きのデッキといえども雨に濡れてしまう。歩道がないのが残念だ。
松浦鉄道の伊万里駅は3番線まであるそれなりの規模の駅なのに、筑肥線の伊万里駅は、ホームの片側に行き止まりの線路が1本あるだけの寂しい終着駅だった。駅員がいて窓口があるのが救いだった。記念に入場券を買ってホームに出た。しばらくすると、黄色いディーゼルカーが1両だけで到着。これが折返しの唐津行きとなる。
女子学生風の若者が2人、それにシニアの女性が一人と私の4人を乗せた列車は13時34分、定時に発車した。筑肥線は、幹線に分類されていて、時刻表では黒く太い線で描かれている。しかし、私が乗った伊万里発の唐津行きはディーゼルカー1両で乗客も少ない。とうてい幹線といえる状況ではなかった。
列車は、各駅に停車しながら、なだらかな山に囲まれた農村地帯をのんびりと走る。女子学生が一人づつ降りていき、車内はシニア女性と私の2人になった。次第に山深くなり、佐里という駅で女性が下車し、ついに私一人だけになってしまった。まさに貸切状態である。その先は、乗り降りがないけれど、列車は律儀に停車し、ドアを開け閉めしながら発車していく。
肥前久保駅を出てしばらくすると、山腹を走っている車内から松浦川を渡るトラス橋が右手後方に見えた。JR唐津線の線路で、トンネルを抜けると唐津線を跨いで列車は右側に移り、唐津線と並走する。2本の線路が並び、一見複線のようだが、右側を走るので違和感がある。本牟田部駅は唐津線の側にしかホームがないので通過だ。かなりのスピードを出しているので快速列車に変身したみたいだ。しばらく唐津線の右側を走ってようやく山本駅に停車。ここで合流して、正真正銘の単線になる。列車はそのまま唐津線に乗り入れる。
気が付くと乗ってきた人がいて、何だかホッとした。次の鬼塚駅は、広くなった松浦川の河畔にあり、写真を撮りたくなる駅だ。発車後、松浦川と分かれると高架になり、唐津市内を見渡しながら進むと、博多方面からやってきた筑肥線と合流して唐津駅に到着する。
せっかくなので一駅先の西唐津駅まで行く。広大な車両基地があるのに、ホームは片面だけで、行き違いもできないようになっている。駅員にきっぷを見せて、一旦、改札口の外へ出てみたけれど、何もなさそうなので再びホームに入った。
先ほどとは異なり6両編成の電車が車両基地からやってきた。福岡空港行きとなっている。車内は、すべてロングシート。旅気分は失せた。
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