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日本の中間管理職はギリギリの状態だ

なぜ、心が折れる職場になってしまうのか?(前編)

■現場感のない上司の気まぐれ、思いつきに振り回される

 マネジャー業務を担うことの醍醐味は、責任と裁量の両方を持ち、自分の意思でチームをダイナミックに動かせ、一人では成し遂げられない大きな仕事ができることにあると思います。

 しかし、プレイングマネジャーである中間管理職には、十分な裁量が与えられているわけではありません。現場のリーダーでありながら自分の意思で采配できないだけでなく、裁量を手放さない部長や経営者の気まぐれや思いつきに振り回されていると感じる人も少なくないでしょう。

 かつて高度成長期には、課長など現場の中間管理職により多くの裁量が任されていました。敗戦後、日本企業はゼロから復興し発展を遂げてきたわけですが、ビジネスのノウハウが確立されていないなか、現場で働く人たちが試行錯誤しながら、自分たちの努力で困難を乗り越えていくしかなかったのです。

 当時は、「課長なのだから思い切ってやってみろ」と現場に仕事を任せ、「最後に責任を取るのが自分の仕事」とドンと構えていた幹部や経営者も多かったものです。現場の多少の失敗は許容される空気があったのは、経済が右肩上がりの時代ならではのおおらかさだったと言えます。

 市場環境が厳しくなった今、企業は短期的な業績を重視する傾向が強まり、現場に対する売上達成・コスト削減のプレッシャーが強まっています。同時に、業績に少しでも響く失敗は許されない空気も醸成されています。必然的に経営から現場を束ねる管理職への締めつけは厳しさを増し、現場に思い切って仕事を任せられないばかりか、失敗の責任だけは現場に押しつけるという理不尽な状況も生まれているのです。

 日本企業の特徴であった株式の持ち合いが減り、外国人投資家が物言う株主として台頭してきたことも影響しています。短期収益や株主還元を強く求める外国人投資家に対し、経営陣が敏感に反応するようになってきています。必然的に、経営陣からの厳しい要求に応えようとする幹部クラスの朝令暮改が当たり前になっているのです。

 実は、中間管理職のみならず部長クラスでもプレイングマネジャー化が進んでおり、現場の混乱を招く要因になっていることも見逃せません。「企業として重要な得意先には部長クラスが直接出向くべき」という管理主義的な発想を持った部長クラスが現場に顔を出すケースもよくあります。なまじ現場に顔を出すから、自分の思う通りに物事が進まないと気になり、重箱の隅を突くようなやり方で現場に口を出すようにもなるのです。

 現場感のない上司の気まぐれや思いつきに振り回され、中間管理職はますます余裕を失っているというわけです。

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前川 孝雄

まえかわ たかお

(株)FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師

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大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。リクルートを経て、2008年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に起業。「上司力研修」「育成風土を創る社内報」「人を活かす経営者ゼミ」などを手掛け、約300社で人が育つ現場づくりを支援。自らも年間100本超の講演、TV番組、雑誌に出演。YAHOO! 「前川孝雄の人が育つ会社研究室」など連載も数多く持つ。


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  • 2016.08.09