『教員免許更新制見直し』は人材確保と教員の負担軽減を達成できるか
第80回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
現行制度の問題はなにか。そして、どう改善するべきか。少人数学級制度に伴って不足する教員の確保とともに、教員の負担を軽減できるかが重要だ。
■教員免許更新制は教員の大きな負担
廃止案が浮上してきたことで教員免許更新制が注目を集めている。
今年5月24日に開かれた教員免許更新制の見直しを議論している中央教育審議会(中教審)の委員会で、とりまとめ役の加治佐哲也・兵庫教育大学長が制度の廃止に触れたことがマスコミに報じられ、「制度が廃止になる」という期待感が教員の間では一気に高まったようだ。
しかし、単純に廃止へと向かう流れではないことも再確認しておく必要がありそうだ。加治佐氏の発言は、「そもそも免許状に有効期限を設けて更新する仕組みが必要と言えるのか」と文科省が議題を提案したことを受けてのことだった。
とはいえ、文科省は完全な廃案を提案したわけではない。文科省は、各教育委員会が行う研修や大学が民間会社などがつくるプログラムを利用する仕組みを提案している。更新時の講習は無くすけれども、それに代わって「日々の講習」を強化するという内容だ。
これを受けて、そういう講習を実施するならば「更新制でなくてもできるのではないか」という、廃止案とも受け取れる冒頭の加治佐発言につながったというわけだ。ただし制度の存続を前提にする委員からの意見もあったため、結論は次回以降の会議の場に先送りされている。
教員免許更新制が教員に不人気なのは、時間的にも経済的にも教員個人の負担が大きいからだ。10年ごとに30時間以上の講習を受けることが義務付けられているが、業務としては認められないため、個人の休みを利用するしかない。それに対する手当等の支給もない。さらには、受講料も自己負担である。そもそもが問題のある制度と言えるだろう。
今年2月2日の閣議後会見で萩生田光一文科相は、「教師が多忙を極める中、『経済的・物理的な負担が生じている』との声や、『臨時的任用教員等の人材確保に影響を与えている』との声もあることを承知している」と述べている。そのうえで、「スピード感をもって制度の見直しなどの取り組みを具体化していきたい。本気で取り組む」と見直しに強い意欲を示している。
これを受けて文科省内での検討が加速し、前述の中教審での文科省提案になり、加治佐発言につながったことになる。
萩生田文科相の発言は、教員の負担軽減に重きを置いているようにも聞こえる。「教員に寄り添う文科相」という評価にもつながっているかもしれない。
ただ、そう考えるのは早計な気がする。むしろ、萩生田文科相発言は後半にキモがあるのではないだろうか。つまり、「人材確保に影響を与えている」から制度の見直しが必要だ、ということだ。
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