「これ以上は無理です」と言えないあなたへ どうしても伝えたい大切なお話【沼田和也】
弱音をはく練習〜悩みをため込まない生き方のすすめ
相談者に応じる側の者として、相談者を一方的に分析するかのように語ってきた。だが、これは相手に対する分析であると同時に、自己分析でもある。
というのも、わたし自身がかつて限界に達し、職場でキレて激昂し、自死しそうになった経験を持つからである。
「ほうれんそう」と言う。報告、連絡、相談である。わたしは出身地から遠く離れた地に妻と共に赴任し、牧師としてよりもむしろ、幼稚園の理事長兼園長としての日々に忙殺されていた。とはいえ、遠方の同僚や友人に、メールや電話などを用いて悩み相談をしようと思えばできた。当時すでにスカイプもあったので、顔を見ながら長時間雑談を楽しむこともあった。それでも、「しんどい」と相談することはなかった。というよりも、そこまで追いつめられているという自覚が、キレるその瞬間までなかったのである。キレた自分に驚いた。何に対してキレたのかが分からなかったし、キレた自分の大声にショックを受けた。
数年前、国会議員をしていた女性が秘書に激昂して暴言を吐いたことがスキャンダルとなり、彼女は議員を辞職した。そういうスキャンダルは、さまざまな業種で起こっている。わたしは彼女を嗤うことができない。わたしだって、もしもキレた相手がわたしを赦さず、訴えていたとしたら、今の仕事に就くことはできなかったであろう。周りの人に赦されて、支えられた結果、今の仕事に就かせてもらっている。スキャンダルを起こした有名人がツイッターで激しくバッシングされる姿を見るにつけ思う。たしかにケースによっては、それは明確に被害者がいるのであって、法的な裁きも受けなければならないものである。だが、そのことと、その人自身がこの世界、この社会で存在してはいけないということとは話がちがう。過ちを犯した人にも、なにが過ちだったのか、その過ちを二度と繰り返さないためにはどのような生き方をしていけばよいのか、自分自身と対話する時間が与えられるべきである。
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目次
序章 弱音をはく練習
弱音をはく練習が足りていないあなたへ
第1章 自分で自分を追いつめないために
「もうこれ以上は無理です」
生きていく意味が分からなくなったとき
第2章 生きづらさの正体を知るために
ある日突然、学校に行けなくなった
ひきこもりだった当事者が語れること
生きづらさの原因は「心」?
第3章 嫉妬心で苦しまないために
コンプレックスを手放さないという選択
他人と比べて嫉妬に苛まれるとき
他人を羨み、悔しくて仕方がないとき
第4章 人間関係を結び直すために
人間関係に疲れきってしまったとき
ため息一つを共有してもらえたなら……
S N S 時代は「別れる」ことが容易でない
第5章 憎しみに支配されないために
怒りや憎しみを無理に手放さなくてもいい
対人トラブルを起こしてしまいがちな人の共通点
「我が子をどうしても愛せない」と慟哭する女性
D V 被害者が虐待を繰り返されないために
第6章 性的な悩みに苦しまないために
「不倫をする人」を断罪しても仕方がない理由
性的な悩みは公の場では語られない
「わたしは男/ 女です」と言いきれない人からの手紙
「よけいなお世話」によって救われてきた経験
第7章 理不尽な社会を生きるために
リストラ・ハラスメントに誰もが遭遇する時代
この苦しみは他人のせいか? 自分のせいか?
死にたくなるほどお金に困っているとき
第8章 孤独な自分を見捨てないために
なぜよりによってわたしが苦しむのか?
子どもの頃によく見た「死刑の夢」
無駄で面倒なことに、幸せは宿っている
「自分自身の物語」をつくり、その読者になる
第9章 他人と痛みを分かちあうために
「ずるい」という想いを認めることから
人は何歳からおじさんやおばさんになるのだろう?
不純な動機で善行をするのはだめ?
終章 弱音をはきながら生きる
他人を妬む気持ちはなくならない