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安倍外交に見る「失敗の法則」〈後編〉

なぜ安倍外交はうまくいかないのか

■低姿勢外交から脱却せよ!

 ちなみにUSJTA、日本国内では「日米物品貿易協定(TAG)」と呼ばれています。
 今回の協定はあくまで物品のみに関するものであり、物品・サービス・投資のすべてを対象とするFTAではないと言いたいわけですが、こんな呼称はデタラメにすぎません。共同声明の正文である英語版に、TAGなどという言葉は出てこないのです。
 (※)驚くべきことに、日本語版は外務省によるものまで含めて仮訳です。この事実が全てを語っていないでしょうか。

 これについては、「日米TAG(物品貿易協定)交渉など信じるな!」として,前後編で詳しく論じましたので、詳しくはそちらをご覧下さい。とまれ、平和主義に基づく低姿勢外交を脱却しないかぎり、わが国は国益を守れずに、ズルズル落ちぶれてゆく恐れが強いのです。
 つけ加えれば、このような日本外交のあり方は、すでにバレバレになっています。たとえば中国のポータルサイト「新浪」は、2017年11月15日、「低姿勢な安倍外交を評価する日本に未来はあるのか」というコラム記事を掲載しました。中国情報サイト「レコードチャイナ」によれば、内容は以下の通り。
 https://www.recordchina.co.jp/b217107-s0-c10-d0062.html

 記事は、トランプ大統領が訪日した時のゴルフ外交で、安倍首相がバンカーで転んだことについて、トランプ大統領が「感動した」と語ったことを紹介。安倍首相の外交を見てみると、ほかにもプーチン大統領に小走りで近寄ったり、米国の議員に対して上体をかがめ腰を低くして手で案内するなど、「低姿勢が目立つ」と分析した。

 トランプ大統領に対して安倍首相は「命令があれば服従する」という姿勢で、反対する態度は少しもなかったと論じた。

 プーチン大統領に安倍首相が小走りで近づいたことについては、「日本人は謙虚さの表れと見なしたが、プーチン大統領からは相応の尊重が得られていない」と指摘。結果的に北方領土問題でプーチン大統領に主導権を握られてしまっているとした。

 ボコボコじゃないですか。
 この調子じゃ、中国からもナメられているんだろうなあ・・・
 ではまた次回♪

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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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