ブラック企業は「見做し労働」でトコトン搾り取る
社会という荒野を生きる①
■終身雇用の正社員という制度を廃止せよ
とはいえ、先に申し上げた通り、終身雇用を約束されない非正規労働者にとって、会社が嫌がる組合結成はリスキーです。他方、正規労働者には、昨今のように非正規雇用だらけの状況では、非正規に落とされたくなければ無理して働けという圧力が働きがちです。
こうした障害が生じるのは終身雇用制があるからです。第一に、正規と非正規の別なく同一内容同一賃金化を進めた上で、第二に、企業の都合でお金でカタをつけて解雇できるようにすることが大切になります。終身雇用を廃止し、国際標準化するのですね。
右肩上がりの時代がとっくに終わった日本では、終身雇用制は有害か、少なくとも役割を終えています。第一に、非正規労働者が増大する状況では、正規労働者は非正規労働者からのアガリを搾取しています。それで左翼系労組を名乗るのは、万死に値する恥晒しでしょう。
第二に、右肩下がりの時代なのに正規労働者を解雇できないので、労働調整のためにサービス残業をさせるしかなくなります。さもなければ、業績不振で賃金カット、挙げ句は倒産となります。正規労働者も倒産と非正規化が恐くてサービス残業せざるをえません。
終身雇用の正社員と、会社が契約更新を拒絶できる非正規労働者の区別がある現状を前提にすれば、団結権・団体交渉権・団体行動権の三権を有効利用する労働組合への加入が必要で、非正規労働者も弁護士がついたユニオンに個人で加入することが重要になります。
しかし、そもそもこの前提がおかしいのです。おかしい理由は今述べました。だから、これまで繰り返し「まず同一労働同一賃金化から出発し、やがて全職種・全組織で終身雇用制を同時に撤廃せよ」と申し上げてきました。これに対する理屈の通った反論は皆無です。
〈『社会という荒野を生きる。』より構成〉