太田光の“統一教会擁護”発言が炎上中 芸人MC・コメンテーターのワイドショー濫立が国を滅ぼす【松野大介】
「サンデージャポン」(TBS系列)での太田光の毎週のコメントが旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を擁護していると批判を浴び続け、前回の放送ではデーブ・スペクターが強い語気で太田光を説き伏せる場面があった(デーブ・スペクターが語る 太田光の「サンジャポ」統一教会“擁護”問題10/5(水) )。
一連の件を、芸人として80~90年代に活躍し、その後作家に転身した元ABブラザーズの松野大介氏が「芸人濫用ワイドショーの矛盾が露呈する時代になった」と指摘するコラムを寄稿。
旧統一教会の件では太田光の認識不足であることは否めない。デーブ・スペクターはさすがに知識が豊富な上に、この件の重大性を知っているので、アメリカ人らしく悪の部分を言い切った。
日本の問題を日本の番組で日本人がアメリカ人に公開レクチャーされること自体が情けないが、ニュースを芸人が仕切るワイドショーが多い現代では、起きて当たり前のことだと思う。
◆ワイドショー化したニュースと芸人の濫用
ワイド史を振り返ると、80年代初頭までは「奥さまスタジオ 3時のあなた」のような主婦向けワイドが午後帯にあるくらいで、内容は夕飯の料理やファッション、ニュースは芸能ニュースが主。やがて情報番組と名を変えて午前帯にも広がった。同時に「ニュースステーション」(現、報道ステーション枠)の登場を皮切りにプライムタイムから深夜にニュース番組が増えた。
2000年代のテレビ不況からニュース込みのワイドショーが目立ち始め、情報・ニュース・ワイドの境目のない番組が濫立。評論家や弁護士がタレント化し、タレントや芸人が逆に評論家っぽくコメンテーターを務めるようになり、こちらもボーダーレスになった。
制作側からすればニュース映像を1日中使い回し出来て、事件などを扱えばネタを考えずに済み、スタジオで討論する時間を長くするので、お金も企画力も使わなくていい。
芸人のワイド司会者を並べると、
太田光(爆笑問題) 「サンジャポ」
加藤浩次(極楽とんぼ) 「スッキリ」
設楽統(バナナマン)「ノンストップ!」
恵俊彰(ホンジャマカ) 「ひるおび」
松本人志(ダウンタウン) 「ワイドナショー」
芸人ではないが、谷原章介(俳優)が「めざまし8」、終了した番組だと「グッとラック!」で落語家の立川志らく。「バイキング」の俳優、坂上忍など。
芸人のコメンテーターはもはやキリがない。
「TVタックル」などタレントと専門家が社会時評を言い合う番組も多い。私見だが関西の「そこまで言って委員会」は専門家とタレントが持論を勝手に言い放つ番組の最たるものではないか?
◆ビートたけしが作ったテレビの芸風
触れておきたいのは、芸人のトップを長年走ってきたビートたけしが「TV タックル」や著書で社会時評をしてきたことに多くの芸人が影響を受けたことだ。
だが、たけしさんは知識量が豊富な上に、評論家のような専門的な知識の披露や見識は控え、多面的な視野で人間や日本人の本質を「ブッタ斬る」芸風だった。
今の芸人はそれが出来ないし、浅い知識で評論家ぶったコメントをして、テレビマンもそういったまじめな発言を望んでいる。テレビがワイドショーだらけだから稼ぐために出るしかないのだが、そんなトークは芸人(と女優やアイドル)による井戸端会議のレベルだ。
今の視聴層の大半は、著名人の井戸端会議をテレビで眺めていたいのかもしれないが、ソーシャルメディアを活用する層には、今回の太田光の対応を見過ごさなかった人が多かった。
◆重大な局面の時、ワイド芸人が国を危機にする
今回の旧統一教会のような、一部とはいえ国民の財産、そして議員の当選や政策を左右してきた疑いがある団体について、取り上げるMCの芸人の視野の狭い知識と見識がネットで批判されたことは、起こるべくして起こった。
日本は貧困国と比べ貧しくなく、70年以上戦争がなく、暴行、略奪、人種問題が大きく起こる国ではない。平和な国では芸人がテレビという巨大なマスメディアでニュースを扱える(それほど平和)。
しかし元総理大臣が銃撃され、その根っ子に団体と政治家に関わる大事が明るみに出たりすると、芸人がニュースを扱う矛盾が露になる。これは太田への批判を通して、芸人やタレントにニュースを語らせることへの不満や危機感が可視化されたとも言えるのではないか。
仮に、台湾戦争(有事とはあえて書かない)の危機が緊迫した事態の時、国防の件に朝から夕まで芸人とタレントが語るのか?
戦争はメディアのボタン1つの掛け違いで起こる場合がある。戦争したい勢力に、攻撃の許しを与えたきっかけとなる場合もあるし、国民扇動にもなるからだ。(だから過去の戦争指導者はメディアを重要視する)
◆最後に~太田光は芸人に戻ってほしい
太田の発言に不満な人から自宅に生卵がぶつけられたが、太田は「卵かけご飯ができる」と言った。
本来はこういうシャレで発言する人だ。漫才での時事ネタは切れ味鋭い。最近のある舞台で太田は、テレビではとても放送出来ない話ばかりしていたと聞く。本来、寄席は庶民のガス抜きの場として世相から下世話な話までネタにして笑わせた。
個人的には、芸人太田光に戻ってほしいと思う。
文:松野大介