うぶ毛でも ”剃れる!切れる!抜ける!” 刃物
メイド•イン•東京の名品図鑑 第5回「うぶけや」の「刃物」
「一生に一度は買ってみたい」「一生モノのこだわり商品を手に入れたい」ーー。そんな気持ちにさせる、生活を豊かに彩るこだわりの逸品。「メイド•イン•東京の名品図鑑」シリーズでは、一個人のこだわり読者に、職人の技が詰まった、東京生まれの名品を紹介します。
第5回は、「うぶけや」の「刃物」です。
昔ながらの手砥ぎで仕上げる刃先
店の奥にある工房では、8代当主の矢崎豊さんと息子の大貴さんが刃付けを行っていた。2種類の回転砥石で肉厚を調整してから、目の細かい砥石を使った昔ながらの手砥ぎで刃先を仕上げていく。これぞ、職人の技だ。まだ若い9代の手元を見て、「今後が楽しみだ」と8代は言う。
うぶ毛でも ”剃れる!切れる!抜ける!”刃物
創業は、天明3年(1783年)。うぶけやという屋号は、初代の
㐂 之助(きのすけ)によって打たれた刃物が「うぶ毛でも(包丁、かみそりで)剃れる、(鋏で)切れる、(毛抜きで)抜ける」と評判を集めたことから。文明開化の時代が訪れると、日本で初めてメリケン鋏(今の裁ち鋏)を売り出した。
明治初期には人形町から日本橋にかけての地域がまだ花柳界で賑わっていて、芸者衆が着物に懐中鋏を忍ばせているのが粋とされた。お客のために、食べにくい食材を小さく切るのに使っていたそうだ。これは、現在でも「食用鋏」として人気の逸品である。
一生つきあえる相棒
木造建ての趣きある店舗には、各種の包丁や鋏のほか、小刀、ペーパーナイフ、毛抜き、爪切りなどが種類も豊富に並ぶ。冒頭の写真一番上は、尻の部分が千枚通しになった「封切り小刀」1万7000円。 真ん中は、昭和60年前後に日本で生まれたATSという鋼材を使用した「小型ナイフ」8万6000円。写真一番下は、口幅は6㎜の「厚地毛抜き」で1万1000円(価格はすべて税別)。因みに、毛抜きには他に、口幅が3㎜、2㎜、1.5㎜もある。
砥ぎ直しもしてくれるので、一生つきあえる相棒が見つかるだろう。