ルガーP08(パラベラム・ピストル)~銃器先進国ドイツが生んだ伝説の名銃~
戦場の兵士が頼った腰に下げた「最後の切り札」【第二次大戦軍用拳銃列伝①】
■ルガーP08(パラベラム・ピストル)~銃器先進国ドイツが生んだ伝説の名銃~
自動装填式拳銃が黎明期だった1893年、ドイツで生まれアメリカに移住したが、両国を行き来していた銃器設計技師で発明家でもあるヒューゴ・ボーチャードは、独自に開発したメカニズムのトグル・アクションを組み込んだボーチャード・ピストルをドイツで完成させた。トグル・アクションとは、弾薬の発射時の後退力を尺取虫のような上下動で受け止めて排莢と装填を行うメカニズムで、同銃は、世界初の実用自動装填式拳銃とされている。
このボーチャード・ピストルをドイツ人銃器技師ジョージ・ルガーが改良して生み出したのが、ルガーと総称される一連の自動装填式拳銃シリーズだ。
ルガーはまた、1901年にドイツ武器弾薬工業(DWM)で9mmパラベラム弾を開発し、本銃と組み合わせた。同弾は、威力や撃ちやすさという点できわめて優れた拳銃弾薬で、今日では世界中の軍や法執行機関で制式採用されている名弾薬だ。ちなみに、ルパン三世の愛銃ワルサーP38(「ルパン三世の愛銃ワルサーP38は、連合国側の監視の目が緩かったからこそ生まれた」:2018年05月02日配信)もドイツ製で、この9mmパラベラム弾を使用する。
ルガーが特に有名になったのは、1908年に9mmパラベラム弾を使用するモデルがP08としてドイツ軍に制式採用されてからで、10cm銃身付きのオリジナル・モデルの他、マリーネ(15cm)、ランゲ(20cm)など、銃身長が異なるバラエティーが存在するが、それらをまとめてパラベラム・ピストルの通称で呼ぶこともある。
P08は第一次大戦でドイツ軍の主力軍用拳銃として使用されたが、第二次大戦においても、後継のワルサーP38の不足を補うため生産が続けられた。そのためP08も戦場で大量に使われ、連合軍将兵の戦場土産としては、P38よりP08のほうが人気が高かったという。
また、系列銃のルガーM1900系はスイス軍の制式拳銃として同国で生産され、他にもポルトガル、ブラジル、ブルガリア、シャム、ペルシャなどの各国がP08またはルガー系列銃を制式採用した。そのためバラエティーがきわめて多く、それが人気の秘密で、銃器収集家の中には、P08専門のコレクターやルガー系列銃専門のコレクターまで存在する。
なお、総生産数は約300万挺といわれる。
製造開始年:1908年(ただしP08のみ)
全長:22.3cm 銃身長:10cm
重量:920g 装弾数:8発
使用弾種:9mmパラベラム弾
ライフリング:8条/右回り