はじめての解体。私が解体をする理由。
※注意! 捕獲したイノシシの写真がありますので苦手な方は注意してください。
【第8回】都内の美人営業マンが会社を辞めて茨城の奥地で狩女子になった件
経験したことがある方なら、解っていただけると思いますが……本やインターネットでかじっただけの解体知識だけでは、初めての解体はうまくいきません……! 県の主催する無料の解体セミナーにも参加していましたが、私がセミナーで実際捌いた獲物は10キロ。80キロ超えの獲物とモノが違います。向きを変えるだけでも一苦労です。獲物の大きさもありましたが2時間かかってようやく皮を剥ぐことができました。
この時点で私の息は上がり、全身バキバキ、汗だくの状態でした。余計なところに力が入っていたのでしょう、手はナイフを離してもナイフのもち手のまま固まり、ガクガクでした。解体をしている時に、たまたまおばぁちゃんのお友達のおじいちゃんが遊びに来ていたのですが、実はそのおじいちゃんも罠猟経験者の方だったので、運よく教えを乞うことができました。結論から先に行ってしまうと、私の初めての解体、綿貫き~皮剥ぎ~精肉~小分けまで、10時間以上かかりました(慣れていて早い方だと大物でも1時間半~2時間くらいで解体できるそうです)。おじいちゃんが居なかったら丸2日くらいかかっていたか、もしくは途中であきらめてしまっていたと思います。私はたくさんの方の力を借りながら、へたくそながらもしっかりと解体作業を終えることができました。もう日は暮れていました。
何故、私が解体をするのか。答えは至ってシンプルです。解体作業は命を私に繋ぐための過程にすぎません。解体ができなければ《害獣駆除》という私の都合で失われた獲物の命の無駄遣いになってしまいます。解体を初めて行った日、とても不思議な感覚を覚えました。目の前の“命”が過程を経るたびに“お肉”へと変わっていく。そうなってくると、スーパーに行っても不思議な感覚は蘇ります。目の前の、白いトレーに詰まった“お肉”を見たときに、“命”を連想するようになってきます。
正直、狩猟をする前の私は、スーパーのお肉を見ても、何も感じませんでした。今は違います。白いトレーに詰まったこのお肉は確かに一つの“命”だったのです。
【ジビエの肉は美味しい!決め手は解体。】
さて! 皆さんはジビエ肉にどんなイメージがありますか?(=゚ω゚)
硬い?
くさい?
私はジビエ肉は独特の臭みと風味がするものだと思っていました。でも、違うんです! 私の出会った解体をする猟師さんたち全員が、うまい肉になる決め手は放血(血抜き)の速さと解体だと教えてくれました。山で捕った獲物は止め差しをしてから急いで引き出し、解体するにしてもひとりで数時間はかかります。
考えてみれば、スーパーに並ぶお肉はどこかで一括に管理されていて、時期が来れば屠畜場に運ばれ、整った設備の中で速やかに業務として屠殺、放血、解体、冷凍処理されるわけですから臭みがなく新鮮な状態を保てるんですね。
今回私の初めての解体では獲物がすでに絶命していたので放血ができませんでした・・・。生命活動を停止した獲物の血液は循環が止まりどんどん腐っていきます。
頂いた命を美味しく食べる為には丁寧かつ素早く解体作業を行わなければなりません。
とても難しく大変な作業ですが、経験を積んでいくしかありません。また解体技術もさることながら、獲物の筋肉の付き方や、内臓の位置、オス・メス、こども・成獣の違いも勉強していかなければなりません。一歩ずつでいいんです、少しずつ前に進もう、私はそう決めました。初めて自分で捕って自分で捌いたお肉の味、そして命の重さは私は一生忘れません。
【終わりに】
今回は、私の初めての解体、そして何故、私が解体をするのかを綴らせていただきました。次回は、解体の種類や保存方法、ジビエ肉を食べるときの注意点(リスク管理)について。そしてジビエ肉の流通に関する法律についても綴らせて頂こうと思います。この連載を通して私の、私たちの想いが、少しでも誰かに繋がり、そして何かのお役に立てれば幸いです。
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