「大切なのは誠実であること」。皇室御用達の老舗与儀美容室がお客さまから学んだ“一流の気遣い”
「お客さま目線」を大切にする与儀美容室がお客さまから学んだ素敵な生き方
私ども「与儀美容室」は、私の祖母である与儀八重子が昭和23年に銀座で創業し、その後、母である与儀みどりが継ぎました。この「与儀美容室」は、先日リニューアルした、日本を代表するホテル「オークラ東京」の中にあります。(『与儀美容室がお客さまから学んだ「美しい生き方」』著/与儀育子 より引用)
私たちは美容のプロ、「美の職人」だと自負していますが、人間ですから失敗がまったくないわけではございません。
うちの美容室のスタッフの多くがお叱りを受けたことがあるという、とあるお客さまがいらっしゃいます。お若い頃は海外を飛び回り、生き馬の目を抜くようなお仕事をされていたと伺っており、英語もペラペラで、まさに才媛といった方です。
このお客さまがお越しになったとき、こんなことがありました。
スタッフがシャンプーに入る時、「シャンプーをお手伝いさせていただきます」と申し上げました。スタッフは、決まり文句のつもりで言ったようなのですが、そのお客さまは、「あなたがシャンプーなさるんでしょ? 私がシャンプーをするわけじゃないわよね」と、至極当然なご指摘をされました。
スタッフの物言いが気になっても、聞き流してしまう方もいらっしゃいます。そこをしっかり指摘して立ち居振る舞いや言葉づかいの細かいことまで、徹底的に教えてくださいます。もちろんヘアセットに関しても、ご自分の好みでなければしっかりご指摘くださいます。しっくりしないサービスを「そんなものか」と流して受け入れてしまうと、いつまで経っても好みが伝わらず、ずっと満足されないままです。
このお客さまのように細かく指摘していただくことで、お互いにとって良い緊張感が生まれ、こちらもより上質なサービスをさせていただくことができるのです。
本来は私たちが気づかなければいけないことまでご指摘いただくこともございますし、お客さまを煩わせてしまいますので、とても申し訳なく思うのですが、私たちを育てようというお気持ちが伝わりますので、本当にありがたく思っております。
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戦前、銀座の「資生堂美容室」で働いていた初代・与儀八重子氏が1948年、焦土となった銀座の一角に「シャンプーができる美容室」として開業したのが与 儀美容室のはじまり。その後、丁寧な仕事ぶりや革新的な技術の導入、さまざまな縁も重なって宮家が通うようになり、その後、順宮厚子内親王殿下(池田厚子 さま)の婚礼の支度などを任されるようになる。さらに紀子さまの婚礼支度、雅子さまの婚礼支度、眞子さまや佳子さまの式典や晩餐会でのお支度など、皇室か ら信頼される一流美容室に。さらに与儀美容室は、縁あって山中教授や本庶先生など、ストックホルムで行なわれるノーベル賞受賞者の授賞式支度もされていま す。
そんな一流美容室でありながらも、モットーは「お客様目線」。例えばカラーで白髪を隠そうとしている客に対してカウンセリングし、白髪を活かす「グレーヘ ア」を提案するなど(※そのままカラーをすれば、当然カラー料金が利益になるが、個人の髪質やスタイルなどを踏まえ、客のためにならないことはしない=利 益のみを追求することはしない)、偉ぶることのない仕事ぶりはテレビなどでも特集されています。
本書は皇室御用達ながらも、けして高飛車になることなく地に足をつけた仕事ぶりで高い評価を得ている与儀美容室の「仕事の流儀」を紹介。さらに三代目であ る与儀育子氏が考える将来の展望なども含め、あまり語られることのなかった、与儀美容室の「今まで」と「これから」にも迫ります。