戦艦「大和」の何がスゴかったのか? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

戦艦「大和」の何がスゴかったのか?

世界に誇る日本の最高傑作には、“3つの世界一”があった

 令和元年度の自衛隊観艦式に先がけて開催中の「FLEET WEEK(フリートウィーク)2019」。10月5日、横浜会場のトークショーに『戦艦大和 建造秘録』の復刻改訂版が刊行されたばかりの大和研究第一人者、原勝洋氏が登壇した。
 テーマは『大和の何がスゴかったのか』。「大和」が世界に誇る日本の最高傑作たるゆえんとして氏が挙げる「大和の3つの世界一」とは?

 

①世界一の主砲 〜46センチ砲の脅威〜

「大和」は当時、世界で建造された戦艦の頂点であった。

 第2次世界大戦(太平洋戦争)に就役した戦艦数は80隻、主砲門数は744門に及んだが、その頂点に立ったのが「大和」「武蔵」に搭載された46cm(18・11インチ)砲である。
※1936年以降の新式戦艦29隻と1936年以前の旧式戦艦51隻計80隻となる。

「大和」「武蔵」に続く8種類の砲の口径は

 41cm砲……長門型戦艦「長門」「陸奥」16門
 40.6cm砲…米戦艦アイオワ級4隻を含め13隻、英国戦艦ネルソン級2隻
 38cm砲……ドイツ海軍ビスマルク級2隻ほか23隻
 36cm砲……24隻
 34cm砲……3隻
 32cm砲……4隻
 30cm砲……3隻
 28cm砲……2隻

となっていた。46cm砲がいかに巨砲であったか窺い知ることができる。

「大和」主砲の「限界」発射弾数である命数(砲身の寿命)は200発。これを超えると弾丸の弾道が狂ってくる。

 砲身は発射毎に発生する高熱ガスのために膅面(とうめん)を摩損し、毎回少しずつ精度を不良させる。さらに、施条(「大和」の場合72個)の摩耗量がある一定限度に達する時は、著しくその精度を不良にさせるだけでなく、あるいは膅発(砲身内での爆発)の原因となる。

 ちなみにこの限界に達したものを「命数に達した」といい、この限界に達するまでの射撃弾数をその砲の命数と称した。そこで傷ついた内筒だけを新しく交換する方法をとっていた。

次のページ2つ目の世界一は「安定性」

KEYWORDS:

戦艦大和建造秘録 【完全復刻改訂版】[資料・写真集]

原勝洋(著)

 

なぜ、「大和」は活躍できなかったのか?
なぜ、「大和」は航空戦力を前に「無用の長物」だったのか?

「大和」の魅力にとりつかれ、人生の大半を「大和」調査に費やした編著者の原 勝洋氏が新たなデータを駆使し、こうした通俗的な「常識」で戦艦「大和」をとらえる思考パターンの「罠」から解放する。
 

2020年、「大和」轟沈75周年
世界に誇るべき日本の最高傑作、戦艦「大和」の全貌が「設計図」から「轟沈」まで、今ここによみがえる!「米国国立公文書館Ⅱ」より入手した青焼き軍極秘文書、圧巻の350ページ。さらに1945年4月7日「沖縄特攻」戦闘時[未公開]写真収録

【目 次】
[第1章] 米海軍情報部と巨艦「大和」の謎
[第2章] 戦艦大和・建造の記録
[第3章] 戦艦大和の障害

【大型折込付録】
大和船体被害状況図(比島沖海戦時)
大和・復元図面 ①一般配置図 ②船体線図/中央切断図/防御要領図

オススメ記事

原勝洋

はらかつひろ

戦史研究家

1942年4月、静岡県生まれ。法政大学法学部卒業。

『高松宮日記』(中央公論社)の編集に関する調査に従事。

『文藝春秋』(昭和55年5月号)掲載の「暗号名ウルトラ 山本長官機を撃墜す」は、英訳され現在、米国国立公文書館Ⅱ所蔵の米軍極秘資料「Yamamoto shootdown」ファイルに収録されている。

『戦艦大和発見』辺見じゅんとの共著(ハルキ文庫)、『新装版・ドキュメント戦艦大和』吉田満との共著(文春文庫)の他、『零戦秘録』、『真相・カミカゼ特攻』、『暗号はこうして解読された』、『カラー写真で見る太平洋戦争』、『カラー写真で見る「原爆」秘録』、『真相・戦艦大和ノ最期』、『戦艦「大和」永遠なれ!』、『伝説の戦艦「大和」』(以上、KKベストセラーズ)などの編著がある。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

戦艦大和建造秘録 【完全復刻改訂版】[資料・写真集]
戦艦大和建造秘録 【完全復刻改訂版】[資料・写真集]
  • 原 勝洋
  • 2019.10.12
真相・戦艦大和ノ最期: 写真と新資料で解明!
真相・戦艦大和ノ最期: 写真と新資料で解明!
  • 原 勝洋
  • 2003.06.01
写真・太平洋戦争の日本軍艦[大型艦・篇] (ワニ文庫)
写真・太平洋戦争の日本軍艦[大型艦・篇] (ワニ文庫)
  • 阿部 安雄
  • 2014.06.21