文教都市・国立を例に学ぶ「住む街の選び方」
話題の不動産プロ集団“全宅ツイ”による不動産コラム⑩
「どこに住むのか?」
もし、この重要な要素が「好き嫌い」や「イメージ」を根拠に決められていたら、本稿をご一読いただき、あらためて御検討いただいた方が良いかもしれません。
■街を選ぶ時の魅力やポイント『東京・国立編』
住居を決める際の「街選び」は、都内や都心に実家を持たざる者たちにとって、後々にまで影響を及ぼす可能性のある重要な問題です。ましてや結婚を機に…となれば「新しい実家」をつくる─つまり、「子供たちの故郷」を決めることになるわけですから、ますます一筋縄ではいきません。
だからこそ、これからお家を探される方は、「どの街に暮らすか?」を早い時期に決めると以後の展開がスムーズになります。点在する地域の物件を複数見るとなれば、移動だけでも大変ですし、相場も環境も通勤時間もバラバラで、頭の中がきっとこんがらがってしまうと思います。
では、街を選ぶポイントはどうでしょう。
歴史? イメージ? 地形? 交通利便性?
いろいろあるでしょうが、今回は街を選ぶ時の考え方やポイントを、文教都市「国立」を例にとって解説していきたいと思います。
【1)歴史・物語】
人はなぜ聖地巡礼するのでしょうか。メッカ、エルサレム、伊勢神宮、鷲宮神社、大洗。それはそこに物語があるからです。物語は人を動かす力となります。
国立は、今の西武グループの祖である堤康次郎が関東大震災で被災した東京商科大学(現・一橋大学)を誘致し、国分寺と立川の間に駅を作って鉄道省に寄付(「国立」の名は国分寺と立川から一字ずつ取ったことに由来)、ドイツの大学都市ゲッティンゲンに倣った計画的な街づくりを行ったのが、始まりです。同じく堤が開発した大泉学園は兄弟分に当たります。
このように、街の始まりや由来、物語がはっきりしていると、子供にも説明しやすく、なにより街への愛着を持ちやすいと思います。
新しく作られた街とはいえ、九十年以上の歴史を持つという点も戦後のニュータウンとは一線を画する特色で、何世代にもわたって受け継がれて守られてきたことが伝わります。
【2)景観】
国立の魅力と言えば大学通りの桜並木・銀杏並木でしょう。春は大学通りの歩道橋に花見客が押し寄せます。戦前は滑走路として使われていたことからもわかるように、国立駅南口のロータリーからまっすぐ南へと伸びていて、車で行っても散歩をしても気持ちのいい道です。
大学通り沿いのマンションの高さを銀杏並木と揃えるようにと、住民らが訴訟を起こした(国立マンション訴訟)も、景観を守ろうとする住民の意識の高さを感じます。
三角屋根で有名な「旧国立駅舎」も中央線の高架化に伴って一時撤去されましたが、総事業費十億円をかけて2020年に復元駅舎が竣工する予定です。
「国立駅舎は、国立市の象徴であり国立市民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する国立市民の総意に基く」などと、憲章に明記されているわけではないのですが、それに近い敬意と愛情をもって遇されているのがよくわかります。
国立の景観はそれだけ住民から大事にされているのです。実際にドラマや映画の舞台として使われることも多く、その魅力は全国に伝わっています。
漫画『姫ちゃんのリボン』(作中では「風立市」)、映画「おおかみこどもの雨と雪」、ドラマ「謎解きはディナーのあとで」などにも登場していますが、自分の街が作品の舞台になるのは、住民にとってはやはり誇らしく、嬉しいことだと思います。
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