皇帝の「ミイラ」を利用した領地拡大の戦術と滅亡 ~永遠に生き続けたインカ皇帝~
死後も宮殿で君臨し続けたミイラ皇帝たち
■死後も生きている時と同様 権勢を振るい続ける皇帝
インカ帝国は拡張するにつれて、西海岸の沿岸砂漠地帯の領土を取り込んだ際に、同時に現地のミイラ信仰も取り込んでいった。つまり死者は死後も生きている時と同様に存在し、生者と共に暮らすという文化である。
それにより歴代の皇帝はこの信仰を領土拡張にも利用した。略奪した土地の人々の人心を掌握し、権威の保持にも都合が良かったのだ。
例えばアマゾンに接したチャチャポヤス地方を征服する際には、その地域で昔から信仰されていた崖の中腹に先祖の骨を埋葬する習慣に対し、それらの骨を排除し、代わりにインカの身分の高い者のミイラを配置したのだ。勇猛だったチャチャポヤス族にとって、崖の中腹に埋葬された先祖の骨は心の拠り所だった。インカはその骨の代わりにミイラを配置することで、チャチャポヤス族の心まで支配した。このようにしてインカ帝国は、アンデス地域全土に瞬く間に領土を広げ、中央集権体制へとすり替えさせたのだ。
また歴代皇帝たちは死後も、このミイラ文化の信仰によって権勢を振るった。歴代皇帝たちにはそれぞれその時代の側近たちがおり、彼らは自分たちの既得権や財産を保持しようとした。
■死後も宮殿で君臨し続けたミイラ皇帝たちの生活
ミイラは死後も生き続けていたため、時代が経つほど皇帝の数が増えることになる。ミイラ皇帝たちがどのように君臨したかというと、クスコにある太陽神殿と呼ばれる建物や、それぞれの住んでいた宮殿に死後も住み続け、君臨していたというのだ。
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『特別展ミイラ 「永遠の命」を求めて』
国立科学博物館(東京・上野公園)
【開催概要(東京開催 )】
<会期>2019年11月2日(土)~2020年2月24日(月・休)
<会場>国立科学博物館(東京・上野公園)
〒110-8718 東京都台東区上野公園 7-20
<開館時間>午前9時~午後5時(金曜・土曜は午後8時まで)
※11月3日(日・祝)は午後8時まで、11月4日(月・休)は午後 6 時まで
※入場は各閉館時刻の 30 分前まで
<休館日>月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)および12月28日(土)〜1月1日(水・祝)
※ただし2月17日(月)は開館
※開館時間や休館日等は変更になる場合があります。公式サイト等でご確認ください。
<入場料(税込)>一般・大学生 1,700円、小・中・高校生 600円
※平日アフター3券は会場で平日午後 3 時以降販売 。一般・大学生 1,500円、小・中・高校生500円
※小・中・高校生グループ券は会場で当日、小・中・高校生2名様以上同時入場限定として1人につき500円にて販売 。
※未就学児は無料。 障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名様は無料 。
※本展では、金曜・土曜限定ペア得ナイト券は販売いたしません。
※本展を観覧された方は、同日に限り常設展(地球館・日本館)もご覧いただけます。
※特別チケットも販売 。詳細は公式 サイト へ 。
<主催>国立科学博物館、TBS、日本経済新聞社
<共催>BS TBS、凸版印刷、ローソンエンタテインメント
<後援>TBS ラジオ
<協力>ルフトハンザ カーゴAG
<お問い合わせ>03-5777-8600(ハローダイヤル)03-5814-9898(FAX)
<公式サイト>https://www.tbs.co.jp/miira2019/
<巡回情報>熊本/熊本城ホール、福岡/福岡市博物館、新潟/新潟市立新津美術館、富山/富山県民会館美術館
『教養としてのミイラ図鑑 ―世界一奇妙な「永遠の命」』
著者:ミイラ学プロジェクト
「死」を「永遠の命」として形にしたミイラ。いま、エジプトはもちろん世界各地で、数多くのミイラが発見されており、かつミイラの研究も進んでいる。実は知っているようで知らないミイラの最新の研究結果とこれまでにないインパクトのあるビジュアルで見せたのが本書。高齢化社会の日本ではいま、「死」は誰にとっても身近にして考えざるを得ないこと。「死」を永遠の命の形として表したミイラは私たちに何を語りかけてくるのか? 人気の仏教学者の佐々木閑氏、博物館学者の宮瀧交二氏、文化人類学に精通する著述家田中真知氏の監修と解説とコラムで展開する唯一無二の「中学生から大人まで」楽しめるミイラ学本。