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【戦国合戦のリアル】戦国の城はオーダーメイド

戦国合戦の裏側を『図解 戦国の城がいちばんよくわかる本』の著者であり、現在放送中の大河ドラマ『真田丸』の戦国軍事考証を担当する西股総生さんが解説します!

みんな違って、みんないい

 戦国の城を見ていて「面白い!」と思うことのひとつは、すべての城が違っていて、同じ縄張りがないことだ。そして、どの城もつぶさに見てゆくと、それぞれに理にかなったつくりをしていることがわかる。

 城にはひとつひとつに任務や役割と、築城にあたっての条件とがある。それが、縄張りにも占地にも反映されてくる。

 たとえば、同じ戦国大名が築く城でも、一族の誰かが居城にする城と、領国の境目に築く戦闘用の城とでは、条件がまったく違う。当然、占地も大きさも縄張りも、まったく違う城になる。

 領国の境目に築く戦闘用の山城でも、500人で守る城と、200人で頑張らなければならない城とでは、やはり大きさや縄張りが違ってくる。

 占地にしても、200人なら守備範囲をコンパクトにまとめられるような山がよいが、500人になると入りきれないので、もう少し大きな山を選ぶ、ということがありえる。

 同じ500人でも、訓練の行き届いた精鋭部隊と、農兵がたくさんまじった寄せ集め部隊とでは、戦い方が違ってくる。精鋭部隊なら細かな駆け引きができるから、駆け引きを生かして逆襲を仕掛けられるような縄張りにしたい。でも、寄せ集め部隊だとむつかしい動きはできないから、できるだけ単純な戦い方で守れるようにした方がよい。

 また、守備隊に弓・鉄砲が少ししかないのなら、弓・鉄砲はここぞ、というポイントをしぼってうまく使うようにしたい。一方、応援の鉄砲隊が来ていて、弓・鉄砲がたくさんあるのなら、バンバン撃ちまくって敵を寄せつけないような縄張りにした方がよい。

 また、居城や戦略拠点の城は、敵にぐるりと囲まれても持ちこたえなくてはならないから、どの方向から攻めこまれても大丈夫なように、まんべんなく守りを固めておく必要がある。

 でも、戦闘用の城は、任務によっては敵のくる方向が決まっているから、
その方向に守りの重心を置いた方がよい。逆に、味方と連絡する方向にやたらと堀を掘ってしまうと、守りきれなくなった時に、逃げ道がなくなってしまう。

 このように、城にはひとつひとつ任務や条件があって、それに見合ったつくり方をしてゆくから、ひとつひとつの城が違った形になるわけだ。

 要するに、すべての城はオーダーメイドでつくるゆえに、ひとつひとつがみな個性的なのである。

 

 

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西股 総生

にしまた ふさお

1961 年、北海道生まれ。学習院大学文学部史学科卒業。同大学院史学科専攻・博士課程前期課程卒業。目黒区教育委員会嘱託、三鷹市遺跡調査委員会、㈱武蔵文化財 研究所を経て現在フリー・ライター。城館史料学会、中世城郭研究会、日本考古学協会会員。著書に『戦国の軍隊』『「城取り」 の軍事学』『土の城指南』(以上、学研パブリッシング)、共著に『今日から歩ける! 超入門 山城へGO!』(学研バブリッシング)、『神奈川県中世城郭図鑑』(戎光祥出版)、他城郭・戦国関係の雑誌記事・論考、調査報告書など多数執筆。2016 年大河ドラマ『真田丸』では戦国軍事考証を務める。


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  • 西股 総生
  • 2016.02.20