公式戦デビュー、悔恨の7球
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記<11>
坊ちゃんスタジアムのジャイアンツ戦。デビュー戦で僕の目に映った世界
万感のデビュー
ブルペンから一歩足を踏み出し、グラウンドに出ると、
「ワー」
っという声が聞こえた。
続いて場内のアナウンス。
「ピッチャー、伴投手に代わりましてサブロク双亮」
ドッと湧いた。
そして聞こえてきたコール。
「頑張れ、頑張れ、サブロク! 頑張れ、頑張れ、サブロク!」
公式戦初登板だった。
4月10日、坊っちゃんスタジアムで僕は夢の舞台へはじめて上った。
対戦相手は読売ジャイアンツ。
喜びと緊張が一気にやってきたような状態で、僕はマウンドへ向かっていた。
ちょっと説明をすると、四国アイランドリーグは4チームによる公式戦に加え、定期交流戦として、福岡ソフトバンクホークスの三軍、読売ジャイアンツの三軍との試合が各球団11試合ずつ組まれていて(ホークス8試合、ジャイアンツ3試合)、その結果はリーグの順位や個人成績に反映されることになっている。そのジャイアンツ戦となったこの試合は、2013年のセーブ王・西村健太朗投手や、2011年の盗塁王・藤村大介選手ら錚々たるメンバーが揃っていた。
登板は9回表から。
客観的に見ても、とても重要な1イニングだった。昨シーズン優勝を果てしているチームは、今シーズンも好調を維持しており、前日9日に行われたジャイアンツとの初戦では西村健太朗投手を攻略して1対0でサヨナラ勝ちを収めるなど、開幕から3連勝を飾っていた。この日もその勢いは続き、7回まで0対4と劣勢に立たされていた試合だったのだけれど、8回裏に3点を返し一気に一点差にまで詰め寄っていたのだ。
マウンドまで小走りで向かう。
聞こえてくる声援は僕に勇気をくれた。
正直に告白すると、この日が来ることを不安に感じている部分もあった。球団やチームメイトは僕のことを暖かく迎え入れてくれていたのだけれど、ずっと頭のなかにあったのは愛媛マンダリンパイレーツを応援し続けているファンたちのことだった。チームを純粋に応援し続けているファンから見て、僕はどう映っているのだろうか。