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「子どもの理不尽な言動に耐える教師たち」このまま放置でいいのですか?⑴【西岡正樹】

教師に対する理不尽な言動が低年齢化している理由

 

◾️「毎日、死ね、殺すという言葉が浴びせられる現実がありました」

 

 支援員の方やサポートしている教師の大変さは見聞きしていたが、その思いを直接聞いたことがなかったので訊いてみた。

「今までに子どもから受けた理不尽な言動ってどういうものがありましたか?」と。

 すると、

「特に授業が成り立たないクラスでは、子どもたちの暴言や暴力が絶えず、担任を無視、罵る発言、支援員にも毎日のように、死ね、殺すという言葉が浴びせられる現実がありました」

 そう応えてくれたY支援員の話などを聞けば聞くほど、「このまま放置してはいけないことだ」という思いが強くなった。

 

 <子どもの言動で理不尽だと感じたこと>

・叩かれる

・蹴られる

・引搔かれる

・本をなげつけられる

・唾をはかれる

・毎日「死ね」と言われ続ける

・理不尽なことばを吐かれる

  前述した2つの事例にあるような言動を日常的に受けている教師や支援員の心情を思い図れば、私自身も教師だが、今の私には彼女たちと同じ環境に自分を置くは想像できないし、強い憤りを感じる。その理不尽さに耐えて子どもたちに関わっている教師や支援員の方たちは時に自尊心を失いかけるほどの心理的ダメージを受けていることを、今回の聞き取りで私は知ることができた。

 暴言や暴力を受けながらも、日々子どもたちをサポートしてきた教師は、次のように語っている。

 

(K教師の話)

 

 私が本当に精神的に苦痛だったのは、叩かれる・蹴られる・物を投げられる・唾を吐かれる・という物理的な暴力以上に「言葉の暴力」でした。

 誰かから「死ね」と毎日毎日言われることは、とても悲しいことなのだとよくわかりました。教室に入れずにいる児童に

「戻れるようになったら戻っておいでね」

 などと声をかけると、その返事が、「死ね」と中指を立てて言ってくるのです。

 最初は、小学校低学年の子どもの言うことだし、何を言われても気にしていませんでした。「誰かが言っているのを見て真似しているんだろうな」という程度に思っていました。でも、毎日、何カ月も「死ね」と中指を立てられ続けると、いくら子どもからでも、大人だって悲しくなるんだと痛感しました。

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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