眠れなかったACL敗退。遠藤航が手にしたもの
チームの悲願であったアジアチャンピオン奪回はベスト16でついえた。自ら失点のきっかけを作ってしまった遠藤の心のうちとは。
◆「自分たちの良さ」の出し合い
前への意識を強めるか、自分たちのリズムで戦うために後ろでしっかりと回すのか。
失点のシーン、僕が(カットされてしまった)横パスを選択してしまったのは、後者の意識が強くなってしまい、前への意識が希薄になっていたことが原因だったと思います。結果論ではありますが、このシーンを映像で見返すと、前に運べたな、と思います。こうした試合を読む部分というのは今後も伸ばしていかなければいけない、改めてそう思いました。
試合を読むことについては、延長戦で喫した3失点目にも言えることでした。
サイドの攻防から、中央に入ってきた選手に「ベスト8進出」を断たれたミドルシュートを決められたシーンです。
中盤の選手からすれば、シュートに対して僕か槙野(智章)君が寄せに行けたんじゃないか、という見方ができると思います。実際そのとおりで、試合後槙野君ともそういう話をしましたし、なぜあそこでもう一歩出られなかったのか、非常に悔しいシーンでした。
ただほかにも選択肢があったのではないか、とも考えました。ゴールを決めた相手選手がサイドでボールを持った時点で、中にだけは行かれないような対応ができなかったか。相手の進行方向を縦に限定して、あえてそこに向かわせシンプルなクロスを上げさせる。ズラタンを含めペナルティエリア内はしっかりと人数が揃っていたことを踏まえてもそうした選択肢も頭に入れるべきでした。さらにいえば、その前のセカンドボールが拾えなかったことにも改善点があります。
いろいろと考えればきりがありませんし、サッカーというのは改善点が分かっていても失点してしまうことがあります。それが難しいところでもあり、面白いところなのですが……。
悔しい一戦というだけでなく、その中にある収穫や問題点について、しっかり整理ができるようになり、最終的に感じたことは「ACLは自分たちの良さの出し合いだ」ということでした。
Jリーグでは何度も対戦する相手との試合になるので、どちらかといえば対策をしてきた相手にどう対応するかが勝負を分けるポイントになります。けれどACLのようにほとんど初対戦であるチームとやる場合は、お互いがいかに「自分たちの良さ」を出せるか、という点が勝負を分ける気がするのです。だからこそ、競り合い、パスの精度、ポジショニングといったちょっとした「差」が大きな「差」を生む――。当たり前のことだけど大事なことを学んだACLだったように思います。
この経験は忘れません。ここから切り替えて、残りの試合しっかり足元を見つめて勝利を届けられるようにしたい、そう思っています。