あなたがいつまでも不幸な理由
薬を使わない精神科医宮島賢也が説く、「お母さん病」克服の方法とは?
しかし、薬を使わない精神科医の宮島賢也氏によると、自分で「うつかもしれないな」と思ったときこそ、ハッピーになれる可能性があるとのこと。著書『医者なし薬なしでいつの間にか「うつ」が消える本』より、その真意を紹介したいと思います。
◆「うつ」という病気はマイナスのことばかりではない
自分が人よりストレスを溜めやすいことに気づいて、生き方が苦しいのかも、と気づく方がいます。
しかし大部分の方は、うつ、がん、リウマチになってはじめて、今までの生き方、考え方の苦しさに気づきやすくなります。
うつの場合、薬を飲んで再発を繰り返し、何度目かでやっと自分の生き方、考え方が苦しいことに気づく人が出てきます。思い込みは小さい頃から心の奥深くまでしみ込んでいるので、なかなか「思い込みが苦しみのもと」、とは気づきにくいのです。
そこでメンタルセラピーでは、症状が出たときをチャンスと提案しています。
たとえば「昇進うつ」。部長になったとき、課長になったとき、給料が上がって周囲の扱いも違ってくると、うれしさでいっぱいになる人がいます。その一方で「部下は増えるし、仕事の責任も増える。不安だ」「とても自分は部長の器ではない。やれない。無理だ」とうつになる人がいます。
漠然とした不安をふくらませ、不安のとりこになっていき、イライラしたり気分が落ち込んでいったり……。これは昇進うつです。
うつになる人に共通するのは「自己否定」という観念のとりこになっていて、自分を信じられず、自尊心が低く、自分を愛せないでいる心の状態です。うつになったことさえも「自分は弱い人間だから」「神経が細かすぎるんだ」と卑下して自分を責めます。
昇進うつを訴える患者さんにぼくは
「落ち込みなどのうつ症状が『生き方が苦しい』と教えてくれていませんか。症状が出たら、考え方を変えるチャンスです。うつが過労死や自殺から守ってくれていませんか」
と問いかけます。病気やうつの根本には幼いときから刷り込まれた「自己否定」「自己嫌悪」「自責感」があります。
病気はこれに気づく機会。
この思い込みを開放していきましょう。
◆他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる
精神医学や心理学では、過去の心の傷を探求する方法がありますが、メンタルセラピーでは過去をほじくり返すことはしません。
たとえば親子関係が苦しかったとわかっても、過去に戻って修復はできません。親に認めてほしい、変わってほしい、と思うと苦しさが続きます。
相手は変えられない。過去のつらいことではなく、今からこれからのうれしいことを大切に生きる。
それがメンタルセラピーのシンプルな考え方です。
今の苦しみを「お母さんのせいだ」「お父さんが仕事中毒だったから」と過去の家族関係のせいにしても心が楽になることはありません。
家族をありのままに受け入れ、自分もありのままに受け入れる。それだけで生きるのがとても楽になります。それから、子供からは始まりません。親が笑顔になれば子供も笑顔になります。
相手を受け容れられないと思う時は、無理しないでください。自分が笑顔になる距離を取ることを勧めます。まずは自分を楽にしましょう!