岩政大樹が書く「勝負強さ」にある表裏
理想的なサッカーを貫くこと、それを捨てること
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
2週間眠れなかったサッカー人生最大の「勝負所」
「勝負強さ」とはなにか。
サッカー選手のみならず、アスリートにとっては永遠のテーマです。 ここ一番で結果を出せる人、出せない人。なぜか最後には勝つチーム、負けてしまうチーム……。
この差について前回は、僕の基本的なスタンスとして主にメンタリティの面でお話しました。今回は勝負所の試合の戦い方について振り返ってみたいと思います。
僕が経験してきたサッカー人生で一番の勝負所だったと思い出されるのが、3連覇をかけた2009年の最後の2節です。32節を終え、僕たちは勝ち点2差で川崎フロンターレを抑え、首位に立っていました。しかし、33節はガンバ大阪(僕たちの3連覇が始まる年の前々年、2005年のJリーグチャンピオン)、34節は浦和レッズ(2006年のJリーグチャンピオン)と、ライバルとの試合を2つ残していました。
3連覇とは、当然2連覇を果たした後にしか挑戦できません。力の拮抗したJリーグにおいては2連覇でさえ難しく、僕たちは3連覇への挑戦は自分のサッカー人生において最初で最後だろうという思いがありました。
プレッシャーと緊張で、最後の2週間はほとんど寝られませんでした。僕は正直、その息苦しさから早く解放されたいと思うほど重圧を感じていましたが、過ぎてみて思うと、サッカー選手として幸せな時間だったなと思います。
では、そんな重圧のなかで迎えた人生の勝負所とも言える局面で、僕たちが見せた「戦い方」とはどのようなものだったでしょうか。