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アメリカは織田信長で止まっている国②<アメリカ大統領は征夷大将軍だ!>

大統領は「征夷大将軍」FBIは「火付盗賊改方」上院議員は「帝鑑間詰大名」

嫌でも日本に大きな影響を与えるアメリカ大統領選挙。 今、アメリカでは何が起きているのか? そもそも大統領選挙とはどういうものなのか? 主要なアメリカ大統領を採点しながら、日米史を振り返る、絶賛発売中の『大間違いのアメリカ合衆国』。
その中でも基本的なアメリカの国体を倉山先生に斬っていただきます。今回は、アメリカは織田信長で止まっている国①<アメリカ人の世界観>ナマハゲはアメリカでは撃ち殺される!?の続編です。

FBIは火付盗賊改方みたいなもの

織田信長が幕府を開くとこうなる!?

 アメリカの統治機構は「織田信長が幕府を開くとこうなる」と書きましたが、実際、アメリカ連邦政府の役職に江戸幕府のそれを当てはめるとしっくりきてしまうのです。

 行政府の長で軍の最高司令官である大統領は「征夷大将軍」。

 州の垣根を越えてテロ対策や銀行強盗などの捜査を担当するFBIは、関東全域にわたり天領・旗本領・大名領の関係なく火付けと盗賊を取り締まった関八州火付盗賊改方(かんはっしゅうひつけとうぞくあらためかた)にならい、「全米五十州火付盗賊改方」。

 各州の代表である上院議員というのはさしずめ、幕府の要職に就任する資格のある譜代大名が集まった「帝鑑間詰大名」(ていかんのまづめだいみょう)といったところでしょうか。

 こんな調子で財務長官は「勘定奉行」、国務長官は「外国奉行」といった感じで続けてもいいのですが、これくらいにしておきましょう。

 統治機構(昔の言葉だと上部構造)は、言ってしまえば江戸幕府と同じです。しかし、社会構造(下部構造)は織田信長の時代のままです。

各州を地方の大名に置き換えるとわかりやすい

京都は灰燼と化した室町時代の応仁の乱。本文と直接には関係ありません。

 なぜ、織田信長で止まっている国なのかと言うと、アメリカ人は国際法と連邦法の区別が分からないのです。それどころか、法律が国全体に行きわたっていません。

 大統領は国家元首でありながら、実際の権力はそんなに強くありません。征夷大将軍が、宿老全員の同意に逆らうことができないのと同様、アメリカ大統領は議会の三分の二が敵対的になったら何もできません。州はそれぞれの地方で独立性が強いのでさらに介入できません。

 このあたり、同じ征夷大将軍と言っても、室町幕府の方が近いかもしれません。地方の大名が好き勝手やっていて、宿老全員が結束すれば何一つ意思を通せない。
    ただし、いざ戦になれば、兵馬の大権を持つ征夷大将軍が独裁権を発揮し、皆は付き従うのみ。しばしば「アメリカ大統領の唯一の仕事は戦争」と言われるのですが、雰囲気は室町将軍に似ています。

大間違いのアメリカ合衆国』より抜粋 

明日は、アメリカは織田信長で止まっている国③ <アメリカは未だ天下統一ならず>です。

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倉山 満

くらやま みつる

憲政史研究家

1973年、香川県生まれ。憲政史研究家。

1996年、中央大学文学部史学科国史学専攻卒業後、同大学院博士前期課程を修了。

在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、2015年まで日本国憲法を教える。2012年、希望日本研究所所長を務める。

著書に、『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)『検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む』(光文社)『日本人だけが知らない「本当の世界史」』(PHP研究所)『嘘だらけの日米近現代史』などをはじめとする「嘘だらけシリーズ」『保守の心得』『帝国憲法の真実』(いずれも扶桑社)『反日プロパガンダの近現代史』(アスペクト)『常識から疑え! 山川日本史〈近現代史編〉』(上・下いずれもヒカルランド)『逆にしたらよくわかる教育勅語 -ほんとうは危険思想なんかじゃなかった』(ハート出版)『お役所仕事の大東亜戦争』(三才ブックス)『倉山満が読み解く 太平記の時代―最強の日本人論・逞しい室町の人々』(青林堂)『大間違いの太平洋戦争』『真・戦争論 世界大戦と危険な半島』(いずれも小社刊)など多数。

現在、ブログ「倉山満の砦」やコンテンツ配信サービス「倉山塾」(https://kurayama.cd-pf.net/)や「チャンネルくらら」(https://www.youtube.com/channel/UCDrXxofz1CIOo9vqwHqfIyg)などで積極的に言論活動を行っている。

 

 

 

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