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SMAP解散を納得するために。

「最小限主義の心理学」不定期連載第5回

 仲良くやっていてほしいが……

 TVの芸能人を見ていると、誰と誰は仲が良いといいなと思うものだ。「誰と誰が仲が悪いと嬉しい」とは、私の場合、なかなか思わない。

 だから、バンドやグループが解散となると、悲しくなる。「誰と誰が不仲だ」という噂にも残念な気持ちになる。

 だから、SMAPも結局、本当に仲が悪かったのかと思うと、正直残念だ。どうして残念かというと、それは自分の人生に対するアンチテーゼとしたいからではないか。我々一人ひとりが、「解散」を繰り返してきたから。

 幼稚園の友達と別れ、小学生の友達とは中学生で疎遠になり、あんなに仲が良かった高校時代の友達とも、距離が離れてしまったせいか、疎遠になっている。久米島で出会った多くの人々とも、その後の会社勤めの人々とも、距離をとってしまった。それぞれの時代の仲良しグループと、解散を繰り返してきたのだ。長く続く友もいる。だけども、頻繁に会うのかというと、そんなことはない。そして、そういう距離感を望んでいる。

 SMAPの香取くんは小学校6年生から、同じグループで過ごしてきた。人が強い友人関係を結んだり、将来について悩んだりする10代をグループと忙しく過ごし、いつの間にか40代になろうとしていたのだ。性格の合う仲間と組んだわけではないし、途中でメンバーの悪い部分が見えてきても仕方が無い。

 それでも、メンバー間の仲が良いことを願ってしまう。SMAPのみならず、多くのグループやバンド、コンビの仲が良いことを望む。私はかつての赤西君の脱退を悲しんだし、NEWSの縮小も悲しいと思った。

「仲違いした」という話よりも、「プライベートでも遊んでいる」という情報のほうが嬉しい。お笑いでもスポーツでも同じ。

 ダウンタウンがとんねるずのことに触れると嬉しいし、福原愛と石川佳純もすれ違いを乗り越えて仲良くいてほしい。中田英寿とカズにわだかまりはあってほしくない。バンドなんて、本当にすぐ解散してしまう。

 

 私は中学1年でBoowyを好きになった。アイドル雑誌明星の付録に載っていた「季節が君だけを変える」の歌詞ページを何度も読んだ。さて、「ライブに行きたい」と思っていたら、その年の冬に彼らは解散宣言してしまった。解散理由はいろいろ語られているが、今でも氷室京介と布袋寅泰の仲が良くあってほしいと願っている(実際はあまり良くないと思う)。

 その後も、大好きになったバンドブームの面々は、多くが解散という道を選んだ。バービーボーイズもプリプリもブルーハーツも。小学校のころ活躍し、解散したアイドルグループは、シブがき隊、男闘呼組、光GENJIや忍者。人々が憧れるグループが、みな解散の道を進んでいくのは、どういう過程によって起こるのか。

「方向性の違い」は確かにあるかもしれないが、アイドルグループではそれが成り立たない。結局は、「性格が合わない」が一番で、相手のことを嫌いになってしまったから、すべてが上手くいかないというのが真実だと思う。

「嫌いになってしまう」は、長い時間一緒にいることで起きてしまう。時を重ねて、自分のことを知るにつれ、相手との差異に苛立ち、衝突する。自分を知れば知るほど、相手と距離ができてしまうのだ。それは外から見ると悲しいことだが、個人から見てみると、「合わない人と離れる」は幸せなことだとも言える。嫌いな上司がいて、そのまま同じ会社で人生を終えるのは悲しい。距離が離れれば、あれだけ嫌いだった上司も、いい面だけが見えてきたりする。「上司と部下」という関係だから仲が悪化しただけで、「人と人」だったら問題がなかったりするのだ。

 SMAPも、SMAPじゃなかったら、「人と人」の関係になれる。どんなしがらみも精算して、最小限化することで、人と人になれる。自分の好みも主義主張も捨てて、遊び仲間として付き合うだけ。離れることで、SMAP全員の人間関係は再出発する。現在において、メンバー間の感情は最悪のようだから、このまま最悪という時の流れもあるかもしれない。それでも、外側に立つ自分が思うのは、いつか「人と人」にという未来だ。

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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