Scene.40 本屋から、詩人の詩が流れることもある!
高円寺文庫センター物語㊵
「男は黙ってサッポロビール」って、冗談じゃない!
そりゃ、ビールが大好きで。中でもとりわけ、サッポロ黒ラベルが好きさ。ただ、黙ってor寡黙に飲むなんて考えられない。無理!
話相手のいない一人旅もムリだし、アルコールはみんなと楽しくワイワイと!
ところが、世の中にはいるものだ。まったく対極に存在するような方が。しかも、いい男で詩人って、業務放棄したくなった・・・・友部正人さん。
待ち合わせた四丁目カフェが、賑やかなのもよくなかった。友部さん、小声で話すものだから聴こえやしない。幼少時に自宅の庭の池に落ちて以来、左慢性中耳炎という聴こえ難い聴力。
ともかくですな、友部さんのサポートスタッフのお話から、サイン会の前にポエトリーリーディングを織り込む提案があったのがわかって了解しました。
寡黙な方とは世界も違うようで、テンションが上がらず下がったまんま。これは土俵もリングも違うわいと、打ち合わせの進行はスタッフの方にお任せした。
友部正人サイン会のスタートは、行列を作っていたお客さんがサイン会場の友部さんを囲むように集まっていただいた。
お客さんが、
聴衆に変じてのポエトリーリーディング。友部さんが「アメリカの匂いのしないところへ」という詩を朗読すると、聴衆全員が唱和する朗読会となりました。
「店長。そろそろ、無事終了ですね」
「いや、どうも。
いつも思潮社さんには助けてもらっているって、営業部長にはよろしく伝えておいてね」
「友部さんが頑張ってくださって、今月は『すばらしいさよなら』と『夜中の鳩』の二点も上梓できました。
サイン会以降の、ご販売もよろしくお願いいたします」
シャキさんに替わって、いまの担当者藤井さんも細々面倒をみてくれて本当に助かっていた。
そして、サイン会がそろそろ終わるという頃に、元バイトの京子っぺが飛び込んできた。
「わ。わ。わ。わたし信じらんない!
友部さんは高校生の時からの10年来のファンなのに、寝坊で遅れちゃった!」
「長谷川さん、なにやってるんですか?!
早く、行列の最後に並んでください。ギリギリ、セーフじゃないですか」
「沢田さん。あなたねぇって、言ってる場合じゃないわよね!」
京子っぺ。並み居る、歴代の文庫センターバイトくんスタッフと比べても、頭脳明晰、感性豊潤で引けを取らない。しかしやはり、みんなと共通してどこか抜けていた。完璧な人間がいると思わないが、みんなどこか抜けているところが人間臭くて良かった。
「あのね、あのね。今日買った新刊のほかに、持ってきた友部さんの詩集とレコードにもサインしてもらったの!
友部さんったら、『ずいぶん古いのを、いっぱい持っているね』ですって!
Scene.40 本屋から、詩人の詩が流れることもある!
感性の尖ったお客さんたちをビックリさせるイベントをと、いつも考えていた。
銭湯=お風呂屋さんでのイベントは、いまだに傑作だったと思う。なにしろ温泉好き・お風呂好きの原点、銭湯でイベントである。