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じつは私立中の方がイジメが過激!?
データでひもとく教育格差の大問題。

学校選びは慎重に。公立VS私立、徹底比較シリーズ②

 一時期「荒れる公立中」の問題がメディアを賑わせた。私立ならばイジメの心配をしなくても済むだろう…と考える親御さんも多いはずだ。だが文部科学省の調査によると「私立の方がイジメが過激化」「私立中はイジメの対策が不十分」そんな傾向も浮かび上がってくる。『公立VS私立』(著:橘木俊詔、ベスト新書)は、経済学者・橘木俊詔氏が、こうした「イジメ」の問題も含めて公立と私立の格差に迫った意欲作。同書から調査の結果を見てみよう。学校選びで迷われる読者の参考になれば幸いだ。

 

 文部科学省が2011年に行った「イジメの認知学校数・認知件数」調査(中学校・計1万800校)によると、イジメを認知した学校数の比率は、確かに中学校では私立37.2%に対して公立54.2%と、公立校のほうが多い結果が出ています。しかしイジメの内容で私立と公立を見た場合、同調査では「公立のほうがイジメの数は多いけれども、私立校のほうがイジメが過激化する」という傾向も読み取れます。

 次に挙げるのは同調査の「イジメの様態」項目の区分(中学校)での結果です。「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり蹴られたりする」:公立19.7%、私立30.5%、「金品をたかられる」:公立2.3%、私立7.3%、「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる」:公立5.3%、私立13.6%――などという数字が出ています。私立では過激な内容のイジメが多くを占めています。

 この結果を分析しますと、私立校とひとくちに言っても、いわゆる偏差値の高い名門校から下位校まで、レベルに大きく差があることを考慮に入れなければなりません。私立校には受験進学校に代表されるように、勉学優秀な生徒ばかり集まっている学校もあれば、逆に勉強がまったく不得意、嫌いという生徒がたくさんいる私立校もあるでしょう。私立校では学校間の格差が大きいのです。

(中略)

 文部科学省の同調査の「イジメ発見のきっかけ」という項目では、「公立校のほうがイジメ対策がよく進んでいる」という興味深いデータが示されています。漠然と公立よりも私立が優れているだろうと思うのは、どうも錯覚のようです。

 中学校において、「学校の教職員等が発見」:公立48.5%、国立:20%、私立:40.9%、そのうち「学級担任が発見」:公立17.9%なのに国立8%、私立11.7%となっているのです。普通の公立中学校より私立と国立の中学校のほうが、イジメに慣れていないといえるようです。なぜでしょうか。私立中学校の教師にはイジメに眼を光らせることに対してプライオリティが低いのではないでしょうか。

(中略)

 同調査の「イジメの現在の状況」の、「他校への転学、退学等」という項目でも、公立中学校:0.8%なのに対し、私立中学:3.6%、公立高校:3.1%なのに私立高:7%と、イジメ問題を解消、または一定の解消が図られるよう取り組むよりも、その学校を辞めて学校を移る、私立から公立への転入者が多いことがわかります。

 また2005年に東京都の公立中学校の校長らで組織される「東京都中学校長会」が都内の公立中学校651校を対象に行った調査では、私立から転入学してきた生徒が2002年度には259人だったのが、2003年度は331人、2004年度は359人に達し、その退学理由は、イジメや不登校が28.2%で、暴力行為や喫煙などの反社会的行為が6.5%という内容になっていました(データが少し古いのは、この調査は継続して以前までは行われていましたが、生徒のプライバシーに配慮して数値の公表を控えるようになったという事情があります)。

 当時、東京都中学校長会は東京私立中学高等学校協会に、安易な退学処分の自粛を申し入れたそうですが、「生徒を放り出すな」という公立校からの提言に、私立校は果たして応えられるでしょうか。

(『公立VS私立』をもとに構成)

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  • 橘木 俊詔
  • 2014.02.08