『松本清張賞』と『小学館文庫小説賞』をダブル受賞したゆとり世代が、作家になって思うこと。
現在観測 第45回
「毎年100人を軽く超える新人作家が生まれ、五年後はほとんど行方不明」
そんな恐ろしいことを大学時代に元編集者の先生から聞いたことがありました。2冊目で躓くと大変。3冊目までにデビュー作を超えられるものがかけないと不味い。3冊出してデビュー版元以外の出版社から長編執筆のお呼びがかからなかったら後が苦しい。心臓に悪い話はたくさんあります。
ちなみに額賀はデビュー2年目。3年後は行方不明になっているかもしれません。
そうならないためにも、作家自身も自分の本を一人でも多くの人に届けるために試行錯誤しているのです。
皆様の中に、作家のTwitterをフォローしている人はいるでしょうか。ちなみに私もやっています(@NUKAGA_Mio)。単行本が出る前や雑誌に短編が掲載される前に告知をするのはもちろん、日々の執筆の進捗を報告したりと、結構頻繁にツイートしております。生存報告的な意味合いが強いかもしれません。
例えば、単行本の発売前には書店員さん向けにプルーフ(見本)というものを配布します。発売前にいち早く作品を読んでもらって、販売促進のための感想を募ったりしているのです。出版社の公式Twitterだったり、作家本人が自分のアカウントでプルーフを読んでくれる書店員さんを募集していたりもします。
例に漏れず、私もつい先日、10月発売の新刊『君はレフティ』のプルーフを読んでくださる書店員さんを募集していました。作品を生み出し続けることと並行して、作家自身も本を売るための努力をしなければ本は売れないし、移ろいやすい世の中、あっという間に忘れ去られてしまうのです。
だからこそ、私は「本を読んでくれる人」と同じくらい、「売ろうとしてくれる人」を大切にしていきたいと思っています。
実績のない新人の本の宣伝にお金をかけてくれる出版社。忙しいにもかかわらず、新人作家の新刊のプルーフを読み、発売した本を平台に並べて手書きのPOPを飾ってくれる書店員さん。まだどんな本なのかもわからないのに、発売前の新刊をたくさん発注して「期待しています」と言ってくれる書店員さんもいます。
そういった人々の想いや努力に運んでもらって、私達の本は書店に並ぶことができるのです。そしてその先には、数年後には文庫が出るのをわかった上で、単行本を買い続けてくれる人がいる。牛丼3杯より、額賀の本に価値があると思ってくれる人がいる。「文庫本が出たら絶対に買います」と申し訳なさそうに言って、図書館で借りて読んでくれる人がいる。
本を1冊出すたびに、そんな人々との出会いがあります。出会いが重なれば重なるほど、夜な夜な布団に入って天井を見上げながら、「(作家として)死にたくないなあ」と思います。
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額賀 澪(ぬかが みお)
1990年10月16日生まれ。茨城県出身。日本大学藝術学部文芸学科卒。
2015年に『屋上のウインドノーツ』(「ウインドノーツ」を改題)で第22回松本清張賞を、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビュー。
2016年、『タスキメシ』で第62回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書。その他の既刊に『さよならクリームソーダ』がある。
2016年10月27日『君はレフティ』発売予定。
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