「意図のない球は1球もない」
黒田博樹が見せる「最後の勇姿」を前に。
黒田博樹投手の引退。「決めて断つ」「クオリティピッチング」の2冊を刊行した編集部の思い出
■意図のない球は1球もない
この『クオリティピッチング』の最初の章は、「意図のない球は1球もない」という見出しではじまります。
2013年シーズンには、きわどい判定をした球審が「(ミスジャッジは)1球だけだろ」と声を掛け、それに黒田投手が反論をしたことが話題になったこともありました。黒田投手いわく、「こっちはその1球を投げるためにたくさん調整して、いろんなデータを取っている。それを軽く言われるのはちょっと……」
また、カープ復帰を決めたときにも「1球の重みを感じられるのはどちらか考えた」と話されました。
1球を大事にしてマウンドに上がってきた黒田投手だからこそ、自身の投球を覚えているのは当然だったのかもしれない、といま振り返って思います。
最後になるかもしれない――。
最初にそう書きました。けれど、よく考えてみたらこれは間違っていました。
「1試合、1試合、これが最後の試合だと思ってマウンドに上がる」(「クオリティピッチング」より)
黒田投手は、いつも最後だと思っていたのです。だから、また最後の1試合がやってきた、それだけのこと。
でも、今度の試合だけは編集部も、その1球1球を間違えることなく覚えられるのではないか。そんな気がしています。