「チャイリスク2017 衝撃の真実」<br />第19回党大会が大きな山場。<br />習近平は生き残れるか? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「チャイリスク2017 衝撃の真実」
第19回党大会が大きな山場。
習近平は生き残れるか?

中国専門ジャーナリスト福島香織が「チャイナリスク2017 衝撃の真実」を語る

軍権を完全掌握しなければ、中国はソ連になってしまうと恐れる習近平。

 

経済優先から軍事優先へ

 習近平は政治改革に手をつけるのではなく、また経済改革を進めるでもなく、まず軍制改革を推し進めたのだった。旧ソ連崩壊のプロセスから教訓を得て、政治改革に手をつけてはならないと判断した。胡錦濤の「共産党の執政党地位は永遠ではない」という予言を否定するために、強軍化と軍権の完全掌握を目指したのである。

 これは端的に言うと、共産党執政の正当性の担保が、経済優先から軍事優先に代わってしまったということだ。習近平の言う「改革」は、胡錦濤政権がやろうとしてやれなかった民主化(党内民主)や自由化、法治化の方向ではなく、毛沢東時代の軍権掌握よ再び、という全く逆のベクトルを向いたのだった。瀕死の中国の治療を任された習近平は、いわゆる西側社会が示す民主化、法治化という最先端医療の外科手術ではなく、中国がかつて使ったことのある少々野蛮な方法、強人独裁体制の復活という方法で、中国の蘇生を試みているわけである。

 鄧小平は毛沢東以来の共産党強人独裁体制の弊害を取り除くべく集団指導体制に移行し、経済至上主義路線によって中国社会の自由化を一歩進め、江沢民政権、胡錦濤政権もその路線を受け継いだ。だが、習近平政権は、ある程度経済は自由化したが政治改革がまだ残っている、さあこれから、という状況だった中国にいきなりバックギアを入れて、軍権掌握に党の執政地位の正当性を求めた毛沢東的強人独裁体制の時代にまで引き戻そうとしたわけだ。

1904〜1997/毛沢東死後の実質最高指導者として「改革開放」を求める。
次のページ習近平は毛沢東、鄧小平に匹敵するような人心掌握術にたけた天才肌の戦略家ではない。

KEYWORDS:

オススメ記事

RELATED BOOKS -関連書籍-

赤い帝国・中国が滅びる日
赤い帝国・中国が滅びる日
  • 福島香織
  • 2016.10.26