「ブーイング」に対して選手はなにを感じているのか。その是非を問う――岩政大樹・現役目線
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
■「空気」は「期待」となって入り込んでくる
タイトルを取る度に「3」番の責任を果たせたと思って、少しホッとしたら、またすぐに次のタイトルへの戦いが始まり、息つく間もない苦しい日々が続きました。僕には「3」番にふさわしいものなど何も持ち合わせていなかったので、いつも不安の中で、その空気に向き合っていました。
鹿島での10年(3番を背負ったのは8年)は、そんな10年間だったので、退団を発表し、最終戦で退団のセレモニーをさせていただいた時の空気には本当に驚きました。あんなに温かく包まれたことは、優勝をしたときにもなかったかもしれません。皆さんが僕を作ってくれたんだ。あの厳しい空気が、僕を大きくしてくれたんだと思いました。そして、僕は決してひとりではなく、サポーターの皆さんと歩んできたんだなと感じたものです。
今、僕はファジアーノ岡山の温かい空気の中で新しい夢を追いかけています。ここには、陽だまりのような空気があり、いつも見守られ、支えられている空気感があります。僕がやりたいと思っていた挑戦を思う存分にやらせてもらえていると感じる感覚は、サポーターの皆さんが作り出してくれている感覚でしょう。
その「空気」は僕に「期待」となって入り込んできて、「責任」となって僕の活力につながっています。僕はそれを「結果」でお返ししなくてはならないと思っています。
最近よく、人と人の間に「何をしたらいい」というような正解はないのではないかと思います。大事なことは「何をするか」ではなく、「なぜするか」であり、行動ではなく、気持ちなのだと思います。逆に言えば、「なぜするか」が明確に考えられているなら、全て正解なのだと思います。
スタンドとピッチには多少なりとも距離があり、気持ちなど届かないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。心は無限大であり、気持ちは心から心に繋がるからサッカーは熱くなれるのだと思います。