エジプトのミイラづくりの作業場としては最大規模が発見!ミイラはなぜ作られたのか?
死者の国があると信じた古代エジプト人
エジプト観光・考古省は5月27日、エジプトの発掘チームが北部サッカラで古代エジプトでミイラづくりに使用されていた二つの作業場を発見したと発表。ミイラづくりの作業場としては最大規模のものだという。約3000年という長きに渡り続けられてきた、古代エジプトのミイラ作り。時代により作成法に多少の違いはあるものの、人々はどんな考えに支えられ、そうした埋葬儀式を続けてきたのか。その理由や目的を探りたい。(『教養としてのミイラ図鑑―世界一奇妙な「永遠の命」』(KKベストセラーズ)より)
■『死者の書』が教えてくれる古代エジプト人の死生観
古代エジプトにおいて、ミイラ作りがなぜかくも盛んに行われていたのか。それを知る手がかりが、『死者の書』と呼ばれるものの存在だ。そこからは、古代エジプト人たちの興味深い死生観が見えてくる。
ミイラ作りは古代エジプトにおいて、紀元前1500年頃から同1000年頃にかけてピークを迎えるが、そうした埋葬習慣がなぜ行われたかを知る手がかりとして重要なのが、『死者の書』と呼ばれるものだ。
しかし書とは言ってもこの時代に現在のような紙はない。
当時の死生観や風習を記しるすには、もっぱらパピルス紙が使われた。
これはナイル湖畔の湿地に生育していた植物で、細長い茎の部分を編み合わせて作られている。それを叩いて平面的な巻き紙にしたものだ。
そしてそこに書かれているのは、200以上の呪文である。呪文の内容は、死者の祈りや訴えと、来世での困難な旅を助けてくれるよう願ったもの。
そこから当時のエジプト人たちが考えていた死生観が見えてくるし、なぜそんなにも熱心にミイラ作りを行っていたかも理解できてくる。そしてさらに、なぜ古代エジプト人たちは埋葬の際に『死者の書』を記すようになったのか。それを知る手がかりがオシリス神話である。
※紀元前700年頃のエジプトで作成された女性のミイラの写真は次のページ
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KEYWORDS:
『教養としてのミイラ図鑑 ―世界一奇妙な「永遠の命」』
著者:ミイラ学プロジェクト
「死」を「永遠の命」として形にしたミイラ。いま、エジプトはもちろん世界各地で、数多くのミイラが発見されており、かつミイラの研究も進んでいる。実は知っているようで知らないミイラの最新の研究結果とこれまでにないインパクトのあるビジュアルで見せたのが本書。高齢化社会の日本ではいま、「死」は誰にとっても身近にして考えざるを得ないこと。「死」を永遠の命の形として表したミイラは私たちに何を語りかけてくるのか? 人気の仏教学者の佐々木閑氏、博物館学者の宮瀧交二氏、文化人類学に精通する著述家田中真知氏の監修と解説とコラムで展開する唯一無二の「中学生から大人まで」楽しめるミイラ学本。