センターバック論。もっとも重要な要素は、技術でも高さでもなく……【岩政大樹の現役目線】
元日本代表・岩政大樹が書く「勝つためのセンターバック像」
■プロのセンターバックは能力ではなく責任に対する覚悟が必要
当時の鹿島アントラーズには、野沢拓也選手や本山雅志選手をはじめとする天才たちがいました。サイドバックには内田篤人選手と新井場徹選手という攻撃的な選手が並んでいて、守備のことを考えれば難しさはありました。理詰めで語れば戦いに隙もあったかもしれません。
しかし、僕たちは責任を分け合っていました。それぞれが自分の役割を、覚悟を持って全うしていました。
僕の仕事場はペナルティーエリアでした。どんなに崩されても僕はいつもそこにいるようにしました。どんなに崩されてもゴール前の責任は僕が持ちました。
あの頃の僕たちはそれぞれがそれぞれの責任を尊重し、自分の仕事に覚悟を持っていたから成り立っていたと思います。
センターバックに必要な能力は以前よりもどんどん多様化されてきました。相手の攻撃を弾き返すだけでは充分ではない時代になってきました。先に、そう書きました。
しかし、いつの時代も変わらないのはフィールドプレーヤーで一番自陣ゴール前に近いポジションの選手を「センターバック」と呼ぶということです。
一人ひとりに責任があるとしたら、ゴール前の責任はいつもセンターバックにあります。
その責任はプロの世界ではとてつもなく重いものです。いつも息苦しくて吐きそうになります。責任をどこかに投げてしまいたくなります。
だからこそ僕はプロのセンターバックは、「能力」ではなく「責任に対する覚悟」で差がつくと思っています。
そして、その覚悟が内側から滲みだされた立ち姿のことを、センターバックの「格」と呼ぶのではないかと思います。