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日本人の英会話が苦手な理由は、あることが「信じられない」から。

「最小限主義の心理学」不定期連載第14回

なぜ娘は応用力のある英語を話せるのか

 私は娘が0歳のときから英語だけで話しかけ、映画やアニメは英語のものだけを見せてきた。すると、娘は2歳で英語を話し始め、3歳の今は私よりも聴き取りがいい。その様子を観察しながら、どうして20年間も英語の勉強をしていた私が、娘のような応用力のある英語を話せないのか、考え続けてきた。

 私は英語を必死に勉強して、結局「会話」も「聴き取り」もある程度のところで止まってしまう、典型的な日本人のパターンだ。仕事で英語を使うし、普段は英語のニュースを観たりするけれど、ネイティブ並にはどうあがいてもならない。でも娘は、現在3歳ながら、すでにネイティブと同じような英語の片鱗をみせている。なぜだろう。

 私は「英語を母国語として習得する」という方法を目的としたmothertongue.jpというサイトを起ち上げ、娘が言語を覚えるのと同じ方法を試してみた。自分がほぼ勉強していない言語である、フランス語において、「フランス語の子どものアニメをただ観る」という方法だ。フランス語を選んだのは、予備知識が聴き取りの邪魔をするため。

 ある程度知っていると、それをテストするための聴き取りのようになり、意味をすぐに知りたくなったりして、素直に聴くことができなくなる。だから、まったく単語の意味を知らないフランス語なら、音だけを素直に聴ける。

 そのあとは、辞書を使わない。ただ「推測」するのだ。

「そんな方法で、言語を理解し、話せるようになるわけがない」

 という意見があるのは当然だ。「言語習得に必要なのは、アルファベットや文法である」というのが大半の意見だから。

 スペルもわからず、文法も知らず、「推測」だけで言語を話せるようになるなら、そんなに楽なことはない。だけども、娘はそうやって英語と日本語を別々に覚えたので、そう考えるしかない。

 私は、日本語を知らない娘に、「Youはあなたという意味だよ」と教えることはできなかったのだ。でも今では、私の意見に「Not exactly.」と返してきたりする。私が使ったこともないのに。

 私は「勉強的な教え方をしたことはない」と言っても、誰も信じてくれない。「大変だったでしょう?」「どんな方法をしたんですか?」と聞いてくる。

「英語は必死に勉強して習得するもの」それが日本人としての一般的な常識だ。

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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