「使わなければ、人生を楽しむことはできない」出口治明氏が考える、お金の本質
出口治明さん5月毎日更新 Q.4 そもそもお金とは何なのでしょうか?
やはりお金という物は、使わなければ人生を楽しむことができません。
学校の教科書などには、お金は価値の交換手段、価値の貯蔵、価値の尺度といった役割を持つということがよく書かれています。ただ、シンプルに述べると、「物々交換はめんどくさいよね。お金を仲介したほうが楽だよね」ということに尽きますね。
人間は一人では生きてはいけません。服を作ったり、食料を生産したり、家を作ったり……。衣食住に関する物すべてを自分一人の力で生み出すことはできない。だからこそ、誰かに助けてもらわないといけないわけです。
そこで、昔は物々交換を行っていたんですよね。それぞれが作った物をお互いに交換しあうことによって、日々の生活を成り立たせていました。
ただ、物々交換は決して便利ではありません。相手が自分の欲しい物を持っているとは限りませんし、その逆の場合もしかり。つまり、交換したいときに必ずしも交換できるわけではありません。
そうした中で人間は、お金を使うことが一番便利だということを発見したわけです。今ベストセラーになっているユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』にも、お金という虚構を作ったことで商売がうまく回るようになったということが書かれています。
もちろん「お金は価値の交換手段である」と難しく言ってしまってもいいのですが、やはり行き着くところは、「物々交換はめんどくさいよね。お金を仲介にしたほうが楽だよね」ということ。それによって、世界の経済が円滑に機能するようになったのです。
確かに、お金に執着しすぎたり振り回されたりしている人はいるでしょう。人の価値観はさまざまですから、お金を目的と捉えて、毎日通帳の残高を見ては、「ああ、たくさん貯まっているな」とニッコリ笑っている人がいてもいいとは思いますよ(笑)。
ただ、原理原則から考えたら、お金は、人間が日々生活していくうえで必要な物を買うために存在しているはずです。衣食住を充足させることを基本とし、さらには、友達や家族と飲んだり食べたり遊んだり、自分の趣味に使ったりするための手段がお金です。
やはりお金を使わなければ、人生を楽しむことができません。お墓まで持って行けませんから、亡くなるときにたくさんお金があってもしかたがありません。
かつてと言っていたように、それが世界の大多数の考え方であり、お金の本質だと思います。