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お尻をほぐせば「疲れ」はとれる 第6回

通勤電車に揺られながら、最近疲れがたまっているな~とボヤくサラリーマンの方必見。疲れの原因はお尻の固さにあるのです。それを解消する最も効果的な方法はストレッチ。先ごろお尻をほぐせば「疲れ」はとれる』(ベスト新書)を上梓。「Tarzan」でもお馴染み、坂詰真二トレーナーに語っていた

お尻の筋肉を柔らかくすると中高年に起こりやすいケガが防げる

 中高年になると、ちょっとした動作でケガをしやすくなります。人に呼ばれて振り返っただけで首を痛めたり、顔を洗おうと前傾しただけでギックリ腰になったり、階段を一段踏み外しただけでアキレス腱を切ったり。しなる竹のより固い杉の方が折れやすく、伸びる繊維よりも伸びない繊維の方が破けやすいように、筋肉や腱などは柔軟性が失われると損傷しやすいのです。

 ストレッチを継続して柔軟性を高く保てば、大きな力が瞬間的に加わっても、筋肉や腱はそれの力を吸収して伸びるので、ケガのリスクは大幅に低下します。柔軟性が高いと、長期間の刺激、つまり使い過ぎが原因で起こるスポーツ障害も予防できます。

 筋肉や腱の柔軟性が低下して伸びにくくなると、体を動かす時に抵抗となるため、それが骨などとつながる付着部近くにストレスがかかり、やがて炎症が起こります。体の固い人がランニングを続けると、股関節付近、膝下、アキレス腱などに炎症や痛みが起こるのは腿やふくらはぎの筋肉が固く、足を一歩進めるたびに付着部に強いストレスがかかることが一因です。ストレッチで柔軟性を高めれば、筋肉の抵抗が少なくなるので、このような炎症は起きにくくなります。

 特にお尻の筋肉を柔らかくすると中高年に起こりやすいケガが防げます。その一つが膝のケガ。中高年になるとちょっとした動作で膝をいためやすくもなります。これは膝の軟骨がすり減るなど、膝そのものにも原因はありますが、実はお尻にある股関節の固さにも関わっています。

 本来私たちは移動方向を変えるとき、まず股関節を軸にして脚全体を回転させ、進む方向に膝とつま先を向けます。しかし、股関節が固くて動きが悪いと、膝を捻じる力がかかってしまいます。膝は体を支えているにも関わらずとても弱い構造をしており、強く捻じる動作が加わると、半月板や前十字靭帯などが容易に損傷するのです。ですから、股関節を柔らかく保てば、咄嗟の方向転換で起こりやすい膝のケガも防げるのです。

 もう一つ、中高年に起こりやすい脇腹のケガも回避できます。ゴルフや野球、テニスなどのスイングでは体は回転運動をしますが、この時の主な回転軸は背骨ではなく実は股関節です。しかし股関節が固くて動きが悪いと、代償として背骨を軸に上体を無理に捻らざるをえなくなります。上体を捻るのは肋骨に付着している腹斜筋というお腹の筋肉で、ここを酷使するために付着部に炎症が起き、無理をすれば肋骨の疲労骨折を起こすこともあるのです。

 股関節を柔らかく保てば、腹斜筋を使う必要性は減り、肋骨の炎症も避けられるのです。

中殿筋(お尻の側部)のストレッチ 

『お尻をほぐせば「疲れ」はとれる』 (ベスト新書)より構成〉

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坂詰 真二

さかづめ しんじ

1966年生まれ、新潟県出身、横浜市立大学文理学部卒。スポーツ&サイエンス代表。NSCA認定ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト、同協会認定パーソナルトレーナー。横浜リゾート&スポーツ専門学校講師。株式会社ピープル(現コナミスポーツ)でディレクター、教育担当を歴任後、株式会社スポーツプログラムスにて実業団等のチーム、個人選手へのコンディショニング指導を担当。1996年に独立後、指導と後進の育成に加え、各種メディアでも活躍。育成したトレーナーは3000人を超え、「坂詰式『正しい』筋トレの教科書』(カンゼン)ほか、多数の著書・監修書籍がある。


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  • 2017.05.09