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「カカオはお金にならない」? チョコレートを作る技術がなかった農園で始めた栽培

PNG(パプアニューギニア)マヌス島のカカオ 第3回

銀座「エスキス」のシェフ・パティシエである成田一世が、収穫からサロン・ド・ショコラ出展までチョコレート作りの全行程をレポートする連載です!

カカオとバニラを発見!

 パプアニューギニアの首都からプロペラ機乗り継いでマヌス島へ、そしてそこからさらに小さな船に乗り換えてびしょびしょになりながら約3時間…。やっと到着したカカオがなる島では農村の小屋に滞在する。

 島の主食は椰子の葉のでん粉をバナナの葉に包んで蒸したものだ。大きな椰子の硬い葉の内側を汲んできた川の水の中でなんども揉み、しばらく放置して濁った水の下に沈殿したでん粉を使う。味はというと……。

 そんな食生活を送る島の人々だが、我々が訪れると飼っている鳥をさばいて宴を催してくれる。そのご馳走の作り方をお教えしよう。まず大きなタライを2つ用意する。一方にさばいた鶏肉とココナツの実や野菜、そしてココナツジュースを入れる。そこに熱々に焼いた大きな石を入れて煮立たせ、もう一つのタライをかぶせて蓋をし、煮えたら出来上がりだ。

 さて、カカオに話を戻そう。農村から歩いて15分ほどのところに農園がある。農園といっても、林の中に伐採されたカカオの木が並んでいる感じ。

 初めて訪れたとき、彼らにはチョコレートを作る技術が無いため「カカオはお金にならない」と、単価の高いバニラを栽培していた。カカオの木は伐採され荒れ放題で、バニラを栽培する支柱代わりに使われていた程度だった。

 私は彼らに、カカオもきちんと栽培してはどうかと提案した。古いカカオの切り株に新しい苗を接ぎ木すると、枝が生え、翌年には収穫できる立派なカカオの実がなった。カカオの古木はまだしっかりと地に根を張っていたのである。このカカオの実を収穫し、彼らとともに、発酵や乾燥の作業を行っていく。

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成田 一世

なりた かずとし

銀座「エスキス」シェフ・パティシエ。「ピエール・エルメ・パリ」「ジョエル・ロブション」などで腕を磨き’12年に帰国。現在に至る。’17年「ASIA'S BEST 50 RESTAURANTS2017」にて「Asia's Best Pastry Chef」受賞。


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