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長野県阿南町「新野の雪まつり」

新野の子供たちは誰しもが、「篠笛」を吹くことができるという。

私の新年は、毎年1月14日に行われるこの祭りを訪れることで始まる。祭りの日が近くなると新野の雪まつりの郷愁ある笛の音が私の頭の中をまわる。今年は目的があった。それは「篠笛」の撮影。音楽の教科書に篠笛の写真を提供するのだが、これがなかなかむずかしい、一番良く祭りで使われているのは明笛。篠笛に大変に似ているのだが穴が一つ多く、そこに竹紙を貼りその振動で微妙に音色を変える。篠竹の篠笛の演奏風景がなかなか撮れなかった。

はっと気がついたのが新野。ここでは横笛と普通に呼んでいるのだが、篠笛だ。小学校に入ると皆、篠笛を手にする。これを中学校卒業まで大事に使う。新野在住の田村清七氏が、新野の生徒全員の笛を丹念に作られている。

新野に自生する篠竹で作られる篠笛。小中学校を通して丈夫に使えるように、ニスが厚くぬられている。新野の子供はだれでも篠笛が吹ける。

 

 

 

 

雪まつりの行列で篠笛を吹く子供たち。

 

 

 

 

 

諏訪神社からの一行が伊豆神社に登って来る。午後5時半。

 

 

 

 

 

 

神楽殿で豊作を願うビンザサラの舞。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本殿の舞に先立って、「伽藍神のまつり」が行われる。本殿の後ろの崖中腹の祠には地神の伽藍様がいらっしゃって、ここで神下ろしの「宣明(せんみょう)」「順の舞(ずんのまい)」を奉納すると本殿の扉が開かれる。ところがこの舞、何の合図もなく暗闇の中でこっそりと始めるのでなかなか気がつかない。初めて撮れた。舞が終わると、地元の人から「よくここにいらっしゃいました」と御神酒が振る舞われた。

奇数歳の少女が一生に一度だけ参加できるという市子。今年は3人。翌日午前1時15分。

 

 

 

 

 

 

 

消防団による乱声(らんじょう)が始まった。薪で神様の部屋、庁屋(ちょうや)を叩き、神様のお出ましを催促する。

 

 

 

 

 

 

大松明に向けて、火を伴った御船が綱を伝わって登っていく。いよいよ眠い、寒い、煙いの三ムイの祭りが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大松明が点火されると、境内はパァッと明るくなる。笛が鳴り響き、最高神「幸法(さいほう)」が庁屋から飛び出してくる。腰を落として、地を摺るように体を移動し。地中の悪霊を祓う。摺る動きを出すようにスローシャッターで撮ってみた(1/6秒)。以降、日の出まで延々と19の仮面が登場するのだが、予定があり新野を後にした。この日、雪が降れば降るほど豊作になるというが、今年は雪がとても少なかった。

長野県阿南町
新野の雪まつり
2015年1月14-15日 撮影/芳賀日向

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芳賀 日向

はが ひなた

1956年長野県生まれ。日本写真家協会会員。日本・世界の祭り、芸能を48ヵ国にわたり取材。『週刊朝日百科 日本の祭り』シリーズ連載(朝日新聞社)、『日本の祭り』監修(旅行読売出版)ほか。芳賀ライブラリー代表。


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