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走る美術館「現美新幹線」に乗る

 上越新幹線の越後湯沢と新潟の間を往復する「現美新幹線」。車内を大改造し、片側にソファー席、片側の窓をつぶしてギャラリーとした異色の新幹線車両。世界最速の芸術鑑賞、走る美術館とのキャッチコピーが乗車を呼びかけていた。運よく2016年4月29日からの営業運転に先駆けて行われた試乗会に参加した。

現美新幹線の車両

 越後湯沢駅を出発すると、さっそく車内探訪を始めた。なにしろ新幹線なので、終点の新潟駅までは1時間もかからない。のんびりしていたら、すべてのギャラリーを見終わらないうちに下車しなくてはならないからだ。

カラフルな立体作品を展示した15号車

 

 

 

ガラスをはめ込んだ面白いギャラリーは12号車

 現美新幹線は6両編成で、11号車から16号車までとなっているのは、元が秋田新幹線「こまち」で使われていた車両だからだ。このうち、新潟行きの先頭となる16号車、15号車、14号車、12号車がギャラリー車両で、映像をスクリーンに映し出す16号車、カラフルな立体画像を展示する15号車、新潟の四季折々の写真を展示した14号車、ガラスをはめ込んだ平面に反対側の車窓や座っている乗客が映りこむ12号車と、どれも個性的な特色があって見飽きない。

13号車の半分はカフェー

 13号車は半室がカフェで、壁に配置された絵画を見ながらのティータイムという優雅な時間が過ごせる。お菓子やケーキは新潟産の食材が使われ、試食した佐渡クリームチーズを練り込んだレモンケーキが美味しかった。

13号車の半分はキッズスペース、これも芸術作品なのだ

 13号室の残り半分はキッズスペースで家族連れには喜ばれよう。もっとも、キッズスペースと言っても、きちんと現代美術の展示となっているところが心憎い。

11号車は一見普通の座席車だが芸術的な仕掛けがあった

 最後尾の11号車は、元グリーン車をリニューアルした座席車だ。芸術的な模様のシート以外は普通の車両かと思ったら大間違い。窓のブラインドを下ろしていてトンネルに入ると、ブラインドに模様が浮かび上がる仕掛けがあった。

 

 このように、どの車両も楽しめる現美新幹線。すべてを見終わる頃には、あっけなく新潟駅に近づいていた。高崎駅あたりまで延長運転してくれたらゆっくり車内見物ができるのに、と思いつつ、何回も乗って、その都度、重点的に楽しむ車両を決めておくのがいいのかなと考えた。

 

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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