「AV女優にならなければ、こんなことは起きなかったのにな…」 後悔の念も含めて貪欲に生きるということ【神野藍】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「AV女優にならなければ、こんなことは起きなかったのにな…」 後悔の念も含めて貪欲に生きるということ【神野藍】

神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第16回

 

【そもそも後悔のない人生って何だろう】

 

 そもそも後悔のない人生とは何だろうか。人間は生まれてから死ぬまで数えきれないほどの選択を迫られているが、その全てが「満足いく」または「失敗ではない」選択をしたときにそれが得られると定義するならば、それは本当に可能なのだろうか。

 私はごくごく当たり前に後悔の感情を抱く。その程度はどうであれ、「あのときこうしなければ良かった」というものから「あっちにしていればもっと楽に良い結果を得られたのに」というものまで。

 もちろんAV女優になったことを後悔した瞬間もある。仕事をしている上でひどく嫌な出来事に遭遇する度に「AV女優にならなければ、こんなことは起きなかったのにな」と何度も考えたし、自身の体調のことでも「仕事をしていなければ」と思いを巡らせてしまうこともあった。しかしながら大きな感情の揺れ動きが発生するぐらいの勢いで取り組んでいたのだから、一連のできごとの一瞬を切り取ったときに、後悔の念を抱いてしまうのは仕方がないことだと考えている。

 

 常にその瞬間の最善を選ぼうと努力はしているが、それが全て最高の選択ではない。加えて、どんなに好きなことや誇りに思うことでも何かの要因で簡単に「無理だ」と感じてしまうことはある。そんなときに自分の選択に対して負の念を抱くのは致し方ない。

 私が大事にしているのは、自身にとって重大またはそのときの状況をきちんと把握して、自分の中に「今後似たような選択が現われたときに、どのように対処していくか」をしっかり落とし込んでいくことである。生じた後悔を「後悔する」のステップで留めておくと恐ろしく悪いもののように感じてしまう。

 しかしながら、時間がかかっても、あるいはその瞬間から相当の時間が経過したあとだとしても、どうにか落としどころをつけて付き合っていくうちに、不思議と恐れみたいなものは消えて、自分の中に教訓としてしっかりと刻みこまれる気がするのだ。

次のページ様々な経験と、そこで沸き起こる感情と…

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神野藍

じんの あい

文筆家。元AV女優。

1999年生まれ。2020年5月、早稲田大学在学中に渡辺まおとしてAV女優デビュー。2022年5月、現役引退後は、文筆家・タレントとして活動中。好きな本は谷崎潤一郎『痴人の愛』。趣味はトレーニング。

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